研究課題
細胞内タンパク質輸送を媒介する小胞輸送の最終ステップで起こる小胞膜と細胞膜の融合は、SNAREタンパク質およびExocyst複合体によって媒介される。本研究では、新たに開発したタンパク質間相互作用解析法(Visible immunoprecipitation(VIP)アッセイ)によって、8サブユニットから成るExocyst複合体の構築様式を明らかにしている。さらに、Exocyst複合体とt-SNAREタンパク質のSNAP-25およびSNAP-23との相互作用様式も明らかにしている。一方、CRISPR/Cas9システムを改良して、KO細胞を効率的に樹立するシステムも開発している。平成28年度には、VIPアッセイを活用して、別のt-SNAREタンパク質のSNAP-29とSNAP-47が、それぞれSec3とSec8のサブユニットを介して、Exocyst複合体と相互作用することを明らかにした。一方、ライブセルイメージングによって、v-SNAREタンパク質のVAMP3やVAMP8が繊毛形成の中心となる基底小体の近傍に局在することを明らかにした。したがって、VAMP3やVAMP8などのv-SNAREを含む輸送小胞が、繊毛基部の膜に融合することによって、繊毛へのタンパク質の輸送を媒介する可能性が示唆される。一方、Exocyst複合体は、繊毛内タンパク質輸送を媒介するIFT-B複合体によってリクルートされ、繊毛へのタンパク質輸送を媒介する可能性が考えられた。しかし、IFT-B複合体の中心的なサブユニットであるIFT20をKOしても、Exocyst複合体やSNAREタンパク質の基底小体近傍へのリクルートは影響を受けないことが明らかになった。一方、16サブユニットから成るIFT-B複合体に関しては、VIPアッセイを駆使して全体の構築様式を解明した。
2: おおむね順調に進展している
新たに、t-SNAREのSNAP-29やSNAP-47がExocyst複合体と相互作用する様式を明らかにするとともに、v-SNAREのVAMP2やVAMP8を含む輸送小胞が繊毛形成に関与する可能性を示唆できたことから、研究はおおむね順調に進展している。ただし、Exocyst複合体のサブユニットのKO細胞は、まだ樹立できていない。
まだ樹立できていないExocyst複合体の各サブユニットのKO細胞樹立して、SNAREとの相互作用やIFT-B複合体との相互作用が小胞輸送を介する細胞内タンパク質輸送において果たす役割の解明を目指す。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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