研究課題
細胞核はほとんどの細胞で細胞中央に配置する。このことは細胞分裂時に染色体を均等に娘細胞に分けるために重要である。しかしながら核が中央に配置する機構は未だに解明されていない。報告者は細胞骨格である微小管が細胞質全体において引っ張られることにより細胞核が細胞中央に移動する「細胞質引きモデル」を支持している(Kimura A & Onami, 2005)。さらに、このモデルを達成する機構として「中心体-小胞綱引きメカニズム」を提唱している (Kimura K & Kimura A, 2011)。「中心体-小胞綱引きメカニズム」はエンドソームやリソソームなど細胞内の小胞が微小管上を中心体方向に移動する際に、その反作用力として中心体を引っ張る力を発生し、その力によって中心体及び細胞核が細胞の中央へ移動するというものである。しかし、細胞内で中心体と細胞核の複合体を移動させるのに必要な力の大きさが不明であったために、小胞の移動が十分な力を提供できるかどうか不明であった。報告者らは2016年度、及び2017年度において線虫C. elegansの胚細胞に遠心力をかけることによって、細胞核の移動に必要な力を測定する実験系の確立に成功した。これにより細胞核の移動に必要な力を測定することができ、「中心体-小胞綱引きメカニズム」の妥当性を検証しつつある(論文投稿準備中)。
2: おおむね順調に進展している
報告者は細胞核が細胞中央に移動するモデルとして「細胞質引きモデル」を支持している。このモデルを達成する機構として「中心体-小胞綱引きメカニズム」の妥当性を検証するために、細胞核が細胞内で移動するのに必要な力の測定にも取り組んだ。H28年度はアメリカ・ウッズホール海洋生物学研究所で開発された遠心顕微鏡で、この力を測定することに成功した。
H29年度は力の測定結果について解析を続け、論文発表を行う。本研究は「中心体-小胞綱引きメカニズム」の検証にとどまらず、細胞内で働く力を明らかにする先駆的な研究となることが期待される。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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https://www.nig.ac.jp/nig/ja/research/organization-top/laboratories/kimura