研究実績の概要 |
(1)核移動に必要な力の測定:細胞核の中央配置のメカニズムとして報告者らが提唱していた「中心体-小胞綱引きメカニズム」 (Kimura K & Kimura A, 2011)はエンドソームやリソソームなど細胞内の小胞が微小管上を中心体方向に移動する際に、その反作用力として中心体を引っ張る力を発生し、その力によって中心体及び細胞核が細胞の中央へ移動するというものである。しかし、細胞内で中心体と細胞核の複合体を移動させるのに必要な力の大きさが不明であったために、小胞の移動が十分な力を提供できるかどうか不明であった。報告者らは線虫C. elegansの胚細胞に遠心力をかけながら観察が可能な遠心顕微鏡(米国MBL所有)によって、細胞核の移動に必要な力、および細胞が核の中央化のために発生している力を測定することに成功した。得られた値は「中心体-小胞綱引きメカニズム」で予想される力を整合性のあるものであった(論文投稿準備中)。 (2)細胞質流動による核の移動:報告者のグループで行っていた細胞質流動の解析(Kimura K et al., Nat Cell Biol, 2017)をきっかけとして、細胞質流動によって核が流されて移動する現象を見出した。この細胞質流動による核の移動は不安定で、核の配置機構に対する撹乱とみなせる動きであった。このことから、流動による撹乱と、微小管などに依存した制御される動きの両方が働いて、核の位置が安定的に決定される機構の存在が示された。これらを総合的に理解するために、複数の力発生機構によって核の配置がどのように決定されるか、総合的に理解する研究を進めた(未発表)。
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