本研究の目的は、鳥類という脊椎動物内の“綱(こう)”レベルの大きな動物分類群が共通に持つ形態的特徴の形成メカニズム解析を基軸に、形態の保存性を生み出す“ゲノム配列”と“形態形成メカニズム”の関係を明らかにすることにある。研究目的を達成するために、①鳥類特異的な保存形態の発生メカニズムの解明、② 鳥類特異的なゲノム保存配列を元にした特徴的形態制御配列の同定、③ 保存形態の喪失メカニズムの解明、3つの項目の解析を行なってきた。 ① 鳥類特異的な保存形態の発生メカニズムの解明に関しては、解析対象である鳥類特有の形態のうち、風切羽に関してはこれまでの結果をまとめ、論文を発表した。寛骨に関しては論文を作成し、追加実験等を加えたのち発表した。3本指については、第5指が形成されない原因メカニズムにAERとZPAの前肢特異的な性質が深くかかわることを明らかにし、これまでの研究成果をまとめ、論文投稿準備中である。 ② 鳥類特異的なゲノム保存配列を元にした、特徴的形態制御配列の同定に関しては、同定された特徴的形態制御配列の制御下にあるsim1遺伝子の風切羽領域での時空間的な発現過程を詳細に観察した。 ③ 保存形態の喪失メカニズムの解明については、11月の産卵期にペンギンの受精卵が得られなかったことから、翌30年度に予算を繰越して実験を行った。ペンギン第1指喪失の原因の1つと考えられたAERの早期消失について、ペンギン胚を用いて機能獲得実験(FGF添加)を行うなど、これまでに得られた結果から立てた仮説の検証を行った。
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