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2016 年度 実績報告書

初期胚の動物-植物極を決定するしくみの時系列に沿った包括的解析

研究課題

研究課題/領域番号 15H04377
研究機関大阪大学

研究代表者

西田 宏記  大阪大学, 理学研究科, 教授 (60192689)

研究分担者 今井 薫 (佐藤薫)  大阪大学, 理学研究科, 准教授 (00447921)
小沼 健  大阪大学, 理学研究科, 助教 (30632103)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワードホヤ / オタマボヤ / 動植軸 / 胚発生 / 局在因子 / beta-catenin / 胚葉
研究実績の概要

未受精卵は動物-植物極を結ぶ軸(動植軸)を持っている。この軸に沿って三胚葉が配置され原腸陥入へと進行していく。動物-植物極は全ての動物卵に存在しており、その決定機構を理解することは大きなインパクトを持つ。本研究では、マボヤとオタマボヤを材料として、それぞれの特長を活かしながら、動植軸決定機構を時系列に沿って包括的にかつ実験的に解析することを目的とした。
生物の卵にロードされる母性因子群には、細胞の運命決定や軸決定など初期発生に必須なものが多くある。これらの中には未知の重要な因子も含まれていると期待できる一方、卵形成過程で発現する母性因子を網羅的かつ体系的に阻害するための実験系はごく限られていた。そこで本年の研究では、単純な脊索動物ワカレオタマボヤ(Oikopleura dioica)を用いて、母性因子の大規模な機能的スクリーニングの手法を確立することを試みた。以前の我々の研究からオタマボヤ独自の遺伝子抑制手法として、「DNAi」現象を発見していた。DNAiは遺伝子のPCR断片を注入するだけでターゲット遺伝子の発現を抑制できるというもので、簡便かつ安価なため大規模なスクリーニングに向いている。さらにオタマボヤでは未成熟な卵巣にPCR断片を顕微注入することで母性因子の発現に干渉することも可能である。そこで実際に卵巣で特異的に発現している遺伝子の2000個以上(全体の約56%)をスクリーニングした結果、初期発生に関わる遺伝子を8つ見出した。これらの多くは細胞接着や紡錘体形成などに関わるものであり、植物半球決定因子の候補や動植軸に影響が見られるものは見つからなかった。しかし、この実験系が母性因子の大規模な機能的スクリーニングに有用であることは示すことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

DNAiを使ったスクリーニング法が母性因子の大規模な機能的スクリーニングに有用であることを示すことができた。その結果、初期発生に関わる遺伝子を8つ見出した。これらの多くは細胞接着や紡錘体形成などに関わるものであり、植物半球決定因子の候補や動植軸に影響が見られるものは見つからなかった。動植軸の確立に役割を果たす母性因子を見つけるためには、良質のサブトラクテッドライブラリーの構築、より効率よくDNAiを働かせる工夫、もっと多くの遺伝子のスクリーニングを検討する必要があることがわかった。

今後の研究の推進方策

来年度は、オタマボヤとマボヤを用いた研究をいっそう進める。特に以下の二つの研究について、精力的に実験を進展させる予定である。
1.オタマボヤを用いて、母性の植物半球決定因子をさらなるDNAiスクリーニングで特定する。候補が得られれば、それについて局在解析、機能解析、エピスタシス解析、生化学的解析を行う。
2.マボヤの動物半球では、転写因子であるGATAが動物半球特異的遺伝子の発現に重要である。GATAタンパク質は、GATA塩基配列に結合して動物半球特異的遺伝子の発現を促進する。ただし、GATAタンパク質は卵全体に存在している。ここで疑問となるのは、卵全体に存在する転写因子GATAが、なぜ動物半球のみで働き、植物半球では機能しないのかということである。そこで、この問題を解決するために変異型β-catenin「DisArmed」を胚全体で発現させ、その効果を検証する。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] CRBM(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      CRBM
  • [国際共同研究] Chinese Academy of Sciences(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      Chinese Academy of Sciences
  • [雑誌論文] Internal and external morphology of adults of the appendicularian, Oikopleura dioica: an SEM study.2017

    • 著者名/発表者名
      Onuma, T. A., Isobe, M., and Nishida, H.
    • 雑誌名

      Cell and Tissue Research

      巻: 367 ページ: 213-227

    • DOI

      10.1007/s00441-016-2524-5

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Eccentric position of the germinal vesicle and cortical flow during oocyte maturation specify the animal-vegetal axis of ascidian embryos.2017

    • 著者名/発表者名
      Tokuhisa, M., Muto, M., and Nishida, H.
    • 雑誌名

      Development

      巻: 144 ページ: 897-904

    • DOI

      10.1242/dev.146282

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] DNA interference-mediated screening of maternal factors in the chordate Oikopleura dioica.2017

    • 著者名/発表者名
      Omotezako, T., Matsuo, M., Onuma, T. A., and Nishida, H.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 7 ページ: 44226

    • DOI

      10.1038/srep44226

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Redundant mechanisms are involved in suppression of default cell fates during embryonic mesenchyme and notochord induction in ascidians.2016

    • 著者名/発表者名
      Kodama, H., Miyata, Y., Kuwajima, M., Izuchi, R., Kobayashi, A., Gyoja, F., Onuma, T.A., Kumano, G., Nishida, H.
    • 雑誌名

      Dev. Biol.

      巻: 416 ページ: 162-172

    • DOI

      10.1016/j.ydbio.2016.05.033

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Novel approaches targeting for maternal factors in the appendicularian, Oikopleura dioica2016

    • 著者名/発表者名
      Takeshi A Onuma, Masaki Matsuo, Tatsuya Omotezako, Hiroki Nishida
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      沖縄コンベンションセンター(宜野湾)
    • 年月日
      2016-11-17 – 2016-11-19
  • [学会発表] Embryonic axis specification in ascidian embryos: oocyte to tadpole2016

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Nishida
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      沖縄コンベンションセンター(宜野湾)
    • 年月日
      2016-11-17 – 2016-11-19
    • 招待講演
  • [学会発表] Morphogenesis and patterning of the trunk epidermis of the appendicularian, Oikopleura dioica2016

    • 著者名/発表者名
      Kanae Kishi, Momoko Hayashi, Takeshi Onuma, Hiroki Nishida
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      沖縄コンベンションセンター(宜野湾)
    • 年月日
      2016-11-17 – 2016-11-19
  • [学会発表] DNAi screening for maternal factors that are involved in embryogenesis of the appendicularian, Oikopleura dioica.2016

    • 著者名/発表者名
      Masaki Matsuo, Tatsuya Omotezako, Takeshi A. Onuma, Hiroki Nishida
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      沖縄コンベンションセンター(宜野湾)
    • 年月日
      2016-11-17 – 2016-11-19
  • [備考] Hiroki NISHIDA's Laboratory

    • URL

      http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/bio_web/lab_page/nishida/index.html

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公開日: 2018-01-16  

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