研究課題
未受精卵は動物-植物極を結ぶ軸(動植軸)を持っている。この軸に沿って三胚葉が配置され原腸陥入へと進行していく。動物-植物極は全ての動物卵に存在しており、その決定機構を理解することは大きなインパクトを持つ。本研究では、マボヤとオタマボヤを材料として、それぞれの特長を活かしながら、動植軸決定機構を時系列に沿って包括的にかつ実験的に解析することを目的とした。本年度は顕微操作を用いてオタマボヤの8細胞期胚を動物と植物半球に切り分け、それぞれについてRNA-seqを行い、植物半球に多い母性mRNAの候補をリスト化し、これらの遺伝子について時間空間的解析を行った。9つの候補母性mRNAをwhole-mount in situ hybridizationで検出し、8細胞期に植物半球後方に局在するmRNAを5つ同定した。さらに未受精卵ですでに植物極側に局在するmRNAも1つ同定した。この発見によって、これらの母性mRNAが局在に至る過程を卵形成過程を通して調べることができるようになった。卵形成中のmRNAの局在過程を時系列に沿って調べることのできる動物は限られている。卵成長にかかる時間が約半日と早く、卵形成の発達段階を生きたまま目視できるオタマボヤ卵巣は、そのための実験に適していると考えられる。かねてから、オタマボヤの母性RNAの機能的スクリーニングを行ってきたが、脱リン酸化酵素PP2Aをノックダウンすると産卵後の卵が受精していないにもかかわらず減数分裂を再開し、単為発生を開始するという表現型が観察されることがわかった。PP2Aノックダウン卵は卵巣内にある間は減数分裂が停止したままだが、海水中に産卵されてから減数分裂再開・単為発生を開始した。ノックダウン卵が単為発生するしくみの分子メカニズムを解析し、細胞内カルシウムの変動が重要であることがわかった。この結果は論文として出版した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/bio_web/lab_page/nishida/index.html