研究課題
pqn-74遺伝子の解析: pqn-74(tk137)変異体の咽頭の長さはWTと比べて孵化したばかりのL1幼虫期から有意に長くなっていた。核数計測実験によってWTとpqn-74(tk137)変異体の間で核の数は変わらず、咽頭の細胞数は同じであるとわかった。pqn-74(tk137)では筋肉組織、マージナル細胞が伸びる事によって咽頭は長くなっているが、これらの細胞の構造や局在については大きな変化は無かった。これらの結果から変異体の咽頭は全体的にサイズが大きくなるのではなく、WTの咽頭が前後に引き伸ばされたような形になっていることが分かった。gfp::pqn-74プラスミドを線虫に導入したところ、筋肉、マージナル細胞で蛍光が見られ、更に咽頭内腔でキチンとの共局在が見られた。ここから、PQN-74は筋肉及びマージナル細胞で作られ、lumenに分泌されると考えられる。また、組織特異的レスキュー実験でpqn-74遺伝子は筋肉での発現が重要であるとわかった。phal-3遺伝子の解析:平成27年度にphal-3遺伝子のクローニングに成功した。本遺伝子は過酸化水素の生成に関わるdual oxidaseの活性化因子であるdual oxidase activatorをコードするdoxa-1に相当することが分かった。doxa-1のnull変異は致死であることが知られているが、phal-3(tk132)変異は第3イントロンのスプライスドナーサイトの変異であり、ホモで増殖可能であることから、機能減弱変異であると考えられる。doxa-1::venusを作製し、発現を解析したところ、主として咽頭のマージナル細胞で発現していることが明らかとなった。新規変異体の分離:pqn-74遺伝子の過剰発現株では咽頭長が野生型よりも短くなる。このトランスジェニック株を用いて、EMS処理により咽頭長の長い新規変異体を3株分離した。
2: おおむね順調に進展している
pqn-74遺伝子の発現部位やキチンとの共局在を明らかにした。phal-3遺伝子のクローニングに成功し、doxa-1遺伝子の変異であることを突き止めた。また、これまで困難であった咽頭の核の数を正確に計測できる系を開発し、mig-17およびpqn-74については咽頭の核の数が野生型と変わらないことを明らかにした。新規変異体の分離にも成功した。
pqn-74遺伝子については、キチン合成に関わる他の遺伝子についてそれらの咽頭表現型を解析するとともに、pqn-74との遺伝的相互作用を調べる。doxa-1はbli-1 (dual oxidase), tsp-15 (tetraspanin), mlt-7 (peroxidase)とともに表皮キューティクルコラーゲンのチロシン架橋を行っていることが知られている。そこで、これらの遺伝子が咽頭長制御でも共同して機能しているかを解析する。また、phal-4遺伝子については現在SNPマッピング中であり、28年度中のクローニングを目指す。
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Matrix Biology
巻: 44-46C ページ: 64-69
10.1016/j.matbio.2015.01.001
http://sci-tech.ksc.kwansei.ac.jp/~nishiwaki/