研究課題
pqn-74遺伝子の解析:Bacillusキチナーゼのキチン結合ドメイン(CBD)をalexa 546でラベルしたプローブで、野生型とpqn-74(tk137)変異体の咽頭を染色した。野生型ではCBD-alexa 546はPQN-74-GFPと共局在が見られた。pqn-74(tk137)変異体においてもCBD-alexa 546は野生型と同様に局在したことから、PQN-74はキチンの局在には機能しないと考えられる。我々はキチン脱アセチル化酵素lgx-1の変異体でも咽頭過伸長の表現型があること、pqn-74; lgx-1二重変異体はpqn-74の咽頭長異常を増強しないことを見出した。doxa-1遺伝子の解析:線虫の表皮ではDOXA-1はTSP-15 (tetraspanin)とともにBLI-3 (dual oxidase)を活性化し、MLT-7を介して活性酸素によるキューティクルコラーゲンのチロシン架橋に機能することが知られている。そこでこれらの変異体について咽頭長を測定したところ、tsp-15, bli-3変異体では咽頭長が長くなっているが、mlt-7変異体では変化が無いことが分かった。phal-4変異体の解析:インジェクションレスキュー実験の結果、phal-4変異体の原因遺伝子はgob-1であることが分かった。gob-1はトレハロース-6-リン酸脱リン酸化酵素をコードする。咽頭の過伸長の原因はトレハロースの欠乏かあるいはトレハロース-6-リン酸の蓄積の可能性がある。そこでトレハロース-6-リン酸合成酵素tps-1およびtps-2との3重変異体を作成したところ、咽頭のgob-1変異体の過伸長は抑制された。このことから、トレハロース-6-リン酸の蓄積が咽頭過伸長の原因であると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
pqn-74とキチン脱アセチル化酵素lgx-1の遺伝的相互作用を明らかにした。doxa-1遺伝子がtsp-15, bli-3遺伝子とともに咽頭で活性酸素の生成により咽頭長制御を行っている可能性を示した。また、phal-4遺伝子のクローニングに成功し、トレハロース-6-リン酸の蓄積が咽頭の過伸長の原因であると考えられる結果を得た。これらの研究が予定通りに進んでいる。
pqn-74遺伝子の機能解析:我々はキチン脱アセチル化酵素lgx-1の変異体でも咽頭伸長の表現型があること、pqn-74; lgx-1二重変異体はpqn-74の咽頭長異常を増強しないことを見出している。そこで、lgx-1変異体において咽頭ルーメンにおけるキチンの蓄積量やパターンに変化がないかを調べる。またlgx-1遺伝子の発現をGFP融合遺伝子などを用いて解析する。doxa-1遺伝子の機能解析:dual oxidaseであるbli-3およびその共役因子と考えられているtsp-15の変異体ではやはり咽頭長が長くなっていた。bli-3遺伝子の発現をGFP融合遺伝子などを用いて解析する。また、doxa-1変異体でのtsp-15::Venusやbli-3::GFPの発現など、互いの変異体のバックグラウンドで発現パターンに変化があるかを検討する。gob-1遺伝子の解析:phal-4(tk136)はトレハロース合成酵素であるgob-1遺伝子の弱い変異(スプライシング異常)であることが分かった。Null変異体の表現型を明にするために、CRISPR-Cas9法によるノックウトを試みる。新規咽頭サイズ変異体の分離と原因遺伝子のマッピング、クローニング:昨年度に引き続き、pqn-74過剰発現株を変異原EMS処理することにより、咽頭長が長くなる新規変異体を分離し、マッピング、クローニングを目指す。
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G3
巻: 6 ページ: 1449-1457
10.1534/g3.116.028019
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巻: 12 ページ: e1006276
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http://sci-tech.ksc.kwansei.ac.jp/~nishiwaki/