研究課題
脊椎動物における原腸形成時の細胞運動のメカニズムを再現するために、原腸形成をin vitroで再現する実験系の最適化に取り組んだ。アフリカツメガエル初期原腸胚の原腸陥入を先導する中胚葉Leading Edge Mesoderm (LEM)を切除し、スライドガラスまたはゲル上で培養することによって数百細胞数のLEMを一定方向に移動させるために、原腸形成時に重要とされるケモカインSDF-1を発現する組織片を移動方向に置くなどの試みを行い一定の成果を得た。さらにゲル中に微小な蛍光ビーズを含ませることで、細胞集団の移動時の組織内での力場測定を可能にした。
2: おおむね順調に進展している
既に我々が報告したLEMのin vitro組織培養・移動実験系においては、LEM組織を、実際に中胚葉細胞集団が移動する際の足場となる胞胚腔蓋の細胞外基質を写し取ったスライドガラス上で培養することで、一定方向(将来の前方)への移動を実現していた(Hara et al., 2013)。本研究では足場にゲルを用いる牽引力顕微鏡(Traction Force Microscopy)による力場測定を目標としているため、同手法を改変する必要があった。そこで、胞胚腔蓋の細胞外基質に含まれ、実際にLEMを誘因すると予想されるSDF-1のmRNAをあらかじめツメガエル胚に顕微注入し、同タンパク質を高発現するアニマルキャップ(予定外胚葉組織)を移動する方向に置くことで一定方向へ細胞集団を誘導することを試み成功した。同時にSDF-1の発現濃度によって細胞集団の挙動は様々であり、濃度が高い場合には細胞が離散し集団性を保てなくなることなども明らかになった。そこで、SDF-1の厳密な濃度勾配を形成させ、それにより細胞集団を移動させるより洗練された系へと改良するために、マイクロ流路を用いることとし予備実験を行っている。
マイクロ流路を用いた予備実験では細胞集団を一定方向に移動させることに成功している。核をヒストンH2B-GFPで標識した胚を用いることで、濃度勾配に向かって移動する細胞集団内の個々の細胞の相対的な位置関係を細胞・組織の動態として確認できたため、SDF-1濃度や勾配の傾斜、組織移動の足場となるゲルの硬さ、細胞間接着の強度を変化させるなどによって、その動態がどのように変化するかについて詳細に解析する。主な解析として①ライブイメージングでの核追跡による相対的位置関係、②アクチンダイナミクスを可視化するLife-Actなどによる細胞突起形成活性・極性、③牽引力顕微鏡による細胞集団内での力場、これらの時間発展についてデータ収集し、連携研究者である基礎生物学研究所小山武史による細胞の引力・斥力を基盤とする細胞間相互作用の数理モデルによってこれらのダイナミクスの背景にある原理を解明することを試みる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
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