研究課題
前年度までの研究で、SGR以外にもMg-脱離酵素が存在することが示唆された。そこで、2つ目のMg-脱離酵素の単離を試みた。クラミドモナスのsgr変異株に2つ目の変異を導入し、光化学系IIが完全に欠損した株の単離を目指した。いくつかの変異株の単離には成功したが、現在のところ酵素の同定までには至っていない。従来に比べ格段に高いMg-脱離活性を示すSGR組換タンパク質の作製に成功した。この系を用いて活性に重要なアミノ酸を決定し、触媒機構を推定した。実験の結果、3つのアスパラギン酸と1つのヒスチジンが触媒に関与していることが明らかになった。これらから、ヒスチジンがクロロフィルのMgと配位し、アスパラギン酸がクロロフィルのNにプロトンを供与し、Mg-Nを切断することでMgをクロロフィルから引き抜く機構を提案した。これは、有機物から金属を引き抜く初めての報告である。また、クロロフィル分解の生理的な役割を調べた。SGRを一過的に誘導するとクロロフィルが直ちに分解し、二日後には全てのクロロフィルが分解される。興味深いことに、エチレンやジャスモン酸で誘導される遺伝子が、SGRを誘導することによっても誘導される。おそらくこれらの植物ホルモンがSGRによって誘導され、葉緑体シグナルとして老化をさらに推進したものと考えている。本年度はさらにSGRの進化にも取り組んだ。SGRはクロロフィルbを持つ緑色植物にしか存在しないが、SGRとアミノ酸配列の相同性があるタンパク質がクロロフィルを持たないバクテリアに見つかった。興味深いことにこのバクテリアに存在するSGRホモログは緑色植物より高いMg-脱離活性を持っていた。SGRの分子系統樹の解析から、緑色植物の共通祖先がバクテリアからこの遺伝子を水平移動によって獲得したことを明らかにした。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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