研究課題/領域番号 |
15H04383
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
梅澤 泰史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70342756)
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研究分担者 |
平山 隆志 岡山大学, その他部局等, 教授 (10228819)
坂田 洋一 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (50277240)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アブシシン酸 / リン酸化 / スプライシング / プロテインキナーゼ / 発芽 / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
アブシシン酸(ABA)は、植物のストレス応答を司る重要な植物ホルモンである。植物細胞内のABAシグナル伝達経路は、受容体、タンパク質脱リン酸化酵素(PP2C)およびタンパク質リン酸化酵素(SnRK2)によるタンパク質のリン酸化シグナルが重要である。先行研究によって、SnRK2の標的タンパク質(基質)として複数のmRNAの選択的スプライシングに関わる因子が同定されたことから、これらの因子の機能解析を進め、ABAシグナルとmRNAの選択的スプライシング制御を明らかにすることを目的とした。 27年度は、スプライシング因子のシロイヌナズナ遺伝子破壊株を単離し、それらの表現型解析を行った。ABAを含有した培地上において発芽試験を行ったところ、遺伝子破壊株の中にABA高感受性を示すものやABA非感受性を示すものを見出した。したがって、これらのスプライシング因子はABAに応答してリン酸化制御を受け、ABAシグナル伝達を直接的あるいは間接的に制御することが明らかとなった。 また、ABAシグナルがシロイヌナズナにおけるmRNAの選択的スプライシングに及ぼす影響を網羅的に解析するために、次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を計画した。本年度は、シロイヌナズナのABA応答に異常をきたすpoly(A)特異的RNA分解酵素の変異株ahg2-1の次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を試験的に行い、データを取得した。 一方、ヒメツリガネゴケを用いた解析では、シロイヌナズナSnRK2が標的とする因子の明確なオルソログは同定されなかったが、SnRK2破壊株の作出に成功し、この破壊株はおよそ全てのABA応答を欠損することが明らかとなった。現在、この破壊株を用いたリン酸化プロテオーム解析を行い、新たなスプライシング因子の同定を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した研究計画の一つであるスプライシング因子の遺伝子破壊株の単離が終了しており、さらに、遺伝子破壊株の表現型解析を進めて、一定の成果を得ている。特に、変異体の中にABA応答が変化する表現型を持つものがあったことは大きな進展であると言える。また、スプライシングの全容を解明するためのRNA-seq解析について、すでに第一段階の解析を終えたので、今後得られたデータのスプライシングパターンの解析を進めることによって、着実なデータの取得が見込まれる。ヒメツリガネゴケでは、当初期待されたシロイヌナズナのオルソログを解析することは断念したが、新たな因子を見つけるための取り組みを始めている。以上のことから、研究は順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、スプライシング関連因子の遺伝子破壊株の詳細な表現型解析をすすめて、スプライシング因子によるABAシグナル制御の実態を明らかにしていく。また、RNA-seq解析については、SnRK2の三重変異体を用いた解析を新たに行う。これによって、ABAのリン酸化シグナルによるスプライシングパターンの制御の全容を明らかにすることを目的とする。さらに、ヒメツリガネゴケSnRK2遺伝子破壊株のリン酸化プロテオーム解析を行うことによって、新規なスプライシング関連因子の取得を目指す。
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