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2015 年度 実績報告書

花粉管の伸長や誘引に関わる生理活性物質とその受容機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15H04385
研究機関名古屋大学

研究代表者

金岡 雅浩  名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (10467277)

研究分担者 佐藤 綾人  名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 講師 (10512428)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード花粉管ガイダンス / 受容体 / 化合物
研究実績の概要

被子植物の花粉管は先端成長により精細胞を運ぶ細胞であり、雌性配偶体への花粉管の伸長を適切に制御することは有性生殖においてきわめて重要である。本研究では、(1)雌組織から分泌される新規花粉管誘引物質の同定と性質の解析、(2)ケミカルスクリーニングによる花粉管の伸長や誘引に関わる新規化合物の同定とその作用機序の解明、(3)新規に発見した花粉管誘引因子CALL1やLUREs、および上記で同定した新規花粉管誘引因子の花粉管における受容体の探索をおこなう。これらの解析を通じて、花粉管の伸長方向を制御するシグナル分子とその受容機構の解明を目的としている。当該年度はおもに(1)と(2)について解析を進めた。
(1)独自のアッセイ系を用いた新規花粉管誘引物質の同定と性質の解析
マイクロ流体デバイスを用いた花粉管誘引アッセイ系を開発し、新規誘引因子としてCALL1をトレニア胚珠抽出液から同定した。CALL1の組織内での局在を詳細に検討した結果、細胞壁の成分の1つであるセルラーゼ成分により局在が規定されている可能性が示唆された。
(2)ケミカルスクリーニングによる花粉管の伸長や誘引に関わる新規化合物の同定とその作用機序の解明
花粉管に作用する低分子化合物はAMOR以外にも存在すると考えられる。そこで、分担研究者の佐藤博士の協力により、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(以下ITbMと略)が所有するケミカルライブラリーの化合物を用いて、花粉管の伸長や誘引に影響を及ぼす化合物を探索した。現在までに伸長を阻害する物質の候補として4分子得られている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)独自のアッセイ系を用いた新規花粉管誘引物質の同定と性質の解析
CALL1はマイクロ流体デバイスを用いた独自の花粉管誘引アッセイ系から見いだされた、新規花粉管誘引因子である。CALL1の組織内での局在を詳細に検討した結果、細胞壁の成分の1つであるセルラーゼ成分により局在が規定されている可能性が示唆された。この成果は植物の受精を制御する基礎的な知見につながる。
(2)ケミカルスクリーニングによる花粉管の伸長や誘引に関わる新規化合物の同定とその作用機序の解明
花粉管の誘引は現在の所タンパク質性の分子でしか達成されていない。これを低分子化合物に置き換えることができると、誘引物質の大量生産などの面からも役に立つと期待される。当該年度のスクリーニングでは誘引活性をしめす物質は見つかっていないが、阻害活性を示す物質は複数発見された。これらの分子も広い意味での花粉管伸長方向制御因子として用いることができると期待される。
一般に、拮抗阻害が起こる場合は、阻害物質と活性物質が似た構造を採ることが多い。今回見つかった阻害物質を起点として構造活性相関をすることにより、誘引活性のある物質が見つかる可能性もある。

今後の研究の推進方策

(1)花粉管誘引活性画分からの誘引物質候補タンパク質の探索
これまでに、トレニア雌しべ胚珠組織由来の分泌物を陰イオン交換カラムを用いて分画することにより、花粉管誘引活性のある画分を複数得ている。抗体や質量分析によりCALL1は画分17, 18に、LUREsは画分31, 37に含まれることが分かっている。ここではまず両者を含まない画分12に着目する。質量分析によりこの画分に含まれるタンパク質を同定し、大腸菌を用いてそれらのリコンビナントタンパク質を発現・精製する。花粉管誘引アッセイによりそれらの誘引活性を調べ、新規の誘引物質を同定する。さらに、雌しべを柱頭・花柱など組織別に切り分け、花粉管誘引アッセイをおこなう。誘引活性の見られた組織を用いて、胚珠抽出液と同様の生化学的分画をおこない、新規の誘引物質を探索する。
(2)ケミカルスクリーニングによる花粉管の伸長や誘引に関わる新規化合物の同定
研究分担者の佐藤が所属するITbMでは、研究所独自の化合物をふくむ約30,000もの化合物ライブラリーを保有している。これらの化合物を花粉管伸長培地に加え、胚珠への花粉管誘引アッセイをおこなう。通常の培地でのアッセイと比較することにより、花粉管に対して誘引・忌避・伸長促進・破裂・胚珠への誘引の阻害といった効果を及ぼす化合物を探索する。
(3)花粉管の伸長や誘引に関わる生理活性物質の花粉管における受容体の探索
(1)(2)やこれまでに同定した誘引因子LUREsおよびCALL1が花粉管でどのようにして受容されるかを明らかにするため、これらの受容体を探索する。受容体が同定されれば、花粉管伸長・誘引過程でのその局在の変化などを解析し、シグナル分子がどのようにして花粉管の伸長方向を制御するかを明らかにする。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Peptide signaling in pollen tube guidance2015

    • 著者名/発表者名
      MM Kanaoka, T Higashiyama
    • 雑誌名

      Current opinion in plant biology

      巻: 28 ページ: 127-136

    • DOI

      doi:10.1016/j.pbi.2015.10.006

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 花粉管ガイダンスを制御する分泌因子2016

    • 著者名/発表者名
      金岡雅浩、東山哲也
    • 学会等名
      第57回植物生理学会年会
    • 発表場所
      岩手大学
    • 年月日
      2016-03-19
    • 招待講演
  • [学会発表] Phenotypic plasticity in relation to water environment in allotetraploid Cardamine flexuosa2015

    • 著者名/発表者名
      金岡雅浩
    • 学会等名
      日本進化学会第17回大会
    • 発表場所
      中央大学
    • 年月日
      2015-08-21
    • 招待講演

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公開日: 2017-01-06  

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