研究実績の概要 |
主茎、主根の重力屈性において感受細胞内のシグナリングに関与するDLLs(DGE1, DGE2, DTL)は、側枝及び側根の伸長方向をそれぞれ重力と逆(上)方向及び下方向に向ける働きを持つ。一方、DLLsに相同性を示すものの、重力屈性におけるDLLsの機能に必須なCDL配列を持たないという特徴を持つAtTAC1は、DLLsとは逆に側枝を下方向に向ける生理機能を持つ。DLLsと同じファミリータンパク質でCDL配列をもつが機能未知のCCP1, CCP2, CCP3も解析対象に含め、主軸の重力屈性と側生器官の伸長方向制御を統一的に理解することを目指している。 1. 変異体の確立 dlls 三重変異体背景にccp1及びccp2のCRISPR/Cas9による変異導入を行い、四重変異体を得た。現在これらを交配し五重変異体の作出を進めている。dlls ccp3四変異体を作出し、attac1と多重変異体を作成中である。 2. DLLs ファミリー遺伝子及びAtTAC1の側生器官における発現解析 CCP1, CCP2, CCP3, AtTAC1のPromoter::GUS形質転換体を用いて、大まかな発現パターンを観察した。使用したプロモーターにAtTAC1, CCP3のcDNAを連結し、変異体表現型を相補するかどうか確認したところ、期待に反して相補しなかった。この原因について現在検証中である。 3. DLLsファミリーとAtTAC1の機能解析 3.に記したように、AtTAC1, CCP3について機能的なPromoter::cDNAが得られていないことから、現在スプライシングバリアントやプロモーター領域、cDNAとの連結方法などを改変し、機能を持つコンストラクトを同定している。
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今後の研究の推進方策 |
1. 変異体の表現型解析; ccp1, 2変異体を確立し、dlls, ccp3, attac1 と交配により、様々な組み合わせの多重変異体の作成を行い、各系統の表現型の解析を行うことにより、GSA制御と各遺伝子との関係性を明らかにする。また、ccp3変異体のアリルによる表現型の違いに留意し、DLLsファミリー遺伝子の新規生理機能の解析を進める。 2. DLLs ファミリー遺伝子及びAtTAC1の側生器官における発現解析; CCP3, AtTAC1については、スプライシングバリアントやプロモーター領域、cDNAとの連結方法などを改変し、機能的コンストラクトを同定する。これをもとに、Promoter::GUSコンストラクトが適切であったかを検討し、必要に応じて再度適切な形質転換体の作出を行い、発現を再確認する。 3. DLLsファミリーとAtTAC1の機能解析; AtTAC1, CCP3について機能的なスプライシングバリアントもしくは連結方法を明らかにした後、感受細胞特異的promoter::cDNAを作成する。感受細胞のみでの当該遺伝子の発現が側生器官伸長方向の表現型を相補できるかどうかを指標に、各遺伝子の分子機能の類似性と機能組織を調査する。側枝のGSA制御において逆の活性を示すと思われるDLLsとAtTAC1であるが、両者の発現量のバランスとGSA制御との間に関連があるかを調べる。野生型背景や変異体背景において感受細胞特異的promoterあるいは他の組織特異的promoterによるGAL4-UAS制御系等を用い、各遺伝子の発現量の摂動を引き起す形質転換体を作出する。
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