研究課題
本研究では、単純な発生制御メカニズムを持ち栄養繁殖の仕組みを有するゼニゴケをモデルとし、栄養繁殖の分子メカニズムを明らかにする。本年度、まず杯状体形成を制御するGCAM1の発現組織を詳細に解析するため、GCAM1のプロモーターにGUSレポーター遺伝子を連結しゼニゴケに導入した形質転換体をもちいてGCAM1の発現制御に必要なプロモーター領域の同定をすすめた。またGCAM1下流で制御される遺伝子制御ネットワークを詳細に解明するためGCAM1機能を任意のタイミングで誘導できるGCAM1-GR(GCAM1のC末端側にグルココルチコイド受容体ドメインを融合したタンパク質)を発現する形質転換体の作出を行った。その結果、GCAM1の機能により、気室や杯状体といった組織分化が抑制され、未分化な細胞の増殖が促進されることが示唆された。未分化な細胞増殖を促進するGCAM1の機能を更に解析するため、GCAM1過剰発現体についてRNA-seqによる比較トランスクリプトーム解析を行った。現在、データの解析中であるが、杯状体で発現が上昇している遺伝子の多くがGCAM1異所過剰発現体で発現が上昇していることが示唆されている。また無性芽始原細胞の形成に必須であるkarappo変異体については、蛍光タンパク質を融合したKAR遺伝子コンストラクトによる表現型の相補を確認した。さらにRop型Gタンパク質遺伝子との相互作用を確認するため、酵母2ハイブリッド実験に供するためのベクター作りを進めた。
2: おおむね順調に進展している
栄養繁殖器官発生の「場」の形成を制御するGCAM1の発現制御については、解析の準備が順調に進んでいる。また発現をより直接的に解析するため、in situハイブリダイゼーションの系を立ち上げている。KARAPPO1の解析についてはコンストラクトの作製がやや遅れているが、相互作用因子の探索に必要な酵母の系の立ち上げも順調に進んでいる。GCAM1下流因子を同定するためのRNA-seq解析についても予定した解析を完了できた。
GCAM1上流の制御機構を解明するため、GCAM1の発現制御に必要なプロモーター領域の同定を加速させる。また制御領域に結合するタンパク質を同定するため酵母one-hybrid法に加えてengineered ChIP解析法の導入を検討する。GCAM1の発現パターンを直接的に解析するためin situ RNAハイブリダイゼーション法の確立を急ぎたい。KARAPPO1については、コンストラクトの準備が整い次第、相互作用因子の解析やスクリーニングを進める予定である。
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