研究課題
本年度、国際共同研究で取り組んできたゼニゴケのゲノム解読の成果を論文として発表した(Bowman et al. 2017, Cell 171: 287-304)。ゼニゴケは他の植物種と比較して、植物の発生過程や生理機能の制御に関わる遺伝子の重複が極めて少ないこと、そしてゼニゴケが陸上植物の基本的な分子メカニズムの祖先型をもつことなどが明らかになった。上記の研究成果をベースに、ゼニゴケの杯状体形成を制御するR2R3-MYB型転写因子GCAM1については、ステロイドホルモンによる機能誘導系を利用しRNA-seqによる下流の遺伝子制御ネットワークの解析を進めた。また国内他グループとの共同研究から、植物ホルモンの1つ「サイトカイニン」がGCAM1遺伝子の発現に関わることが示唆されるデータを得た。現在、サイトカイニンシグナル伝達にかかわる幾つかの主要制御因子について遺伝学的解析を進めている。前年度に新たに同定した、GCAM1とは別の杯状体形成の鍵制御因子GCAM2についての解析もすすめた。GCAM2については、組織・器官レベルの遺伝子発現や、過剰発現による影響について特に詳細に解析した。GCAM2はGCAM1と協調して、「陸上植物に保存された新たな芽の形成を制御する遺伝子制御ネットワーク」を構成している可能性が考えられる。また、杯状体形成は正常であるが無性芽の形成に必須の機能をもつKARAPPO遺伝子(以下KARとする)について更に解析した。KARは低分子量Gタンパク質Ropの活性化を行うグアニルヌクレオチド交換因子(GEF)をコードしており、Rop活性調節を介して細胞内アクチン細胞骨格の再構成を制御し、細胞の形や先端成長、非対称分裂に関わると考えられる。KARのGEF活性について生化学的に解析するとともに、KARの機能ドメインについて遺伝学的解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
無性芽発生の「場」を制御するGCAM1については、関連する制御因子候補の同定や機能解析が順調に進んでいる。論文発表に向けたデータもまとまりつつある。無性芽発生の初期プロセスを制御するKAR/RopGEFについても生化学的解析がすすみ、焦点は機能ドメインの解析や上流・下流の制御機構に移りつつある。KAR/RopGEFについげも論文発表に向けたデータがまとまりつつある。
コケ植物ゼニゴケにおけるクローン個体“無性芽”発生の場である杯状体形成の鍵制御因子GCAM1の発現場所について、蛍光タンパク質遺伝子ノックイン株を用いた解析を行う。またこれまでのGCAM1関連のデータについて論文としてまとめ、発表する。また無性芽発生の初期プロセスを制御する低分子量Gタンパク質Ropの活性化因子KAR/RopGEFについて、発現誘導系の構築と解析を行う。またKAR上流とRop下流の制御因子候補について、酵母2ハイブリッドスクリーニングと免疫沈降実験により単離を試みる。またこれまでのKAR関連のデータについげ論文としてまとめ、発表する。前年度からの繰越金については、上記の実験の遂行に必要な消耗品費およびアルバイト雇用費用に充てる。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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