研究課題
魚類のグルココルチコイド受容体(GR)は,神経系,鰓や腸などの体液調節器官,生殖器官で一様に存在する一方,ミネラルコルチコイド受容体(MR)は体液調節器官ではない脳や眼といった中枢神経系に極めて多く存在した.メダカの発生過程を見ても,まず網膜,次いで脳で遺伝子発現が誘導された.このことは魚類のミネラルコルチコイドが体液調節には関わっていないことを示唆する.成魚の脳においてMRは,記憶や情動行動に関わる海馬に相当する終脳背側野外側部,ストレス応答に重要な視索前野-視床下部-下垂体系に存在した.とくに,視運動に関係する視蓋や縦隆起,小脳での局在が顕著であった.神経系のこれらの領域におけるMRの局在は哺乳類や鳥類でも報告されており,ミネラルコルチコイドの脊椎動物における普遍的な機能を反映していることを想像させる.しかし,哺乳類においてmr遺伝子をノックアウトしてしまうと腎障害で致死となり,生命維持に重要ではあるが,その機能の検討が困難であった.近年,メダカなどの魚類でもゲノム編集が可能となった.そこで,人工ヌクレアーゼ(TALEN)を利用してmr遺伝子をノックアウトしたメダカ(mr-/-メダカ)を作出して調べてみると,哺乳類のように発生段階で致死とはならず,ノックアウトの影響は外部形態や摂餌などにも認められなかった.体液調節能についても,淡水中と海水適応過程において,野生型とmr-/-メダカに明らかな差は認められなかった.このことは,MRは魚類,少なくともメダカの体液調節には必須の因子でないことを示す.MRの体液調節作用は,進化の過程で四肢動物においてのみ獲得されたものなのかもしれない.
2: おおむね順調に進展している
mr-/-動物を世界に先駆け作出できた。
mr-/-の表現系を、視覚-脳-行動において発見つつあるので、普遍性をみるためにも、当初計画よりも幅広く検討する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 図書 (5件)
Biol Sex Differ
巻: 7 ページ: 4
10.1186/s13293-016-0058-x
Plos One
巻: 10 ページ: e0134605
10.1371/journal.pone.0134605
Sci Rep
巻: 5 ページ: 14469
10.1038/srep14469
Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 112 ページ: 10515-10520
10.1073/pnas.1509879112
Febs J
巻: 282 ページ: 2488-2499
10.1111/febs.13291