研究実績の概要 |
キイロショウジョウバエ神経系の性差形成にはfruitless (fru)とdoublesex (dsx)の両遺伝子が中心的な役割を果たしている。本研究では、dsx発現ニューロンのうち「pC1ニューロン群」が求愛と攻撃の両方の司令ニューロンシステムに相当することを行動実験により明らかとしてきた(Koganezawa et al., 2016)。pC1ニューロン群はfruとdsxの二重陽性とdsx単独陽性の2種のニューロン群に分けることができ、前者は求愛の解発を司る一方、後者は攻撃の解発に関わる。それぞれのpC1ニューロン群は、「求愛行動を引き起こす雌」「攻撃行動を引き起こす雄」に対して異なる応答を示すことが予想されることから、トラックボール上で自由歩行する個体からのCa2+イメージングにより生理応答の解析を行ってきた。昨年度まではdsx-GAL4を用いてpC1ニューロンの神経突起が展開する領域に対してイメージングを行ったが、この領域には他のdsx発現ニューロンも神経突起を展開しているため、イメージング用プローブであるGCaMP6sをpC1ニューロン特異的に発現した解析を行う必要があった。NP2631-GAL4系統はdsx-FLPと組み合わせたintersection技術を適用することによって、pC1ニューロン群のみを特異的に標識することが可能である。そこで、NP2631-GAL4, dsx-FLP, tubP>GAL80>, UAS-GCaMP6s合計四つのトランスジーンを持つ個体を使うことにより、pC1ニューロン群からのCa2+イメージングを行った。さらにfru-LexAとlexAop-GAL80の二つのトランスジーンを持つ個体によって、fru陰性でdsx陽性のpC1ニューロン群のイメージングも試みた。
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