研究実績の概要 |
概日時計分子振動機構の全容を明らかにするため、フタホシコオロギを用いて解析を進め、以下結果を得た。 ①cry2の6種のスプライシングバリアントについて、ハエS2培養細胞を用いたアッセイを行い、cry2eとcry1あるいはcry2eとcry2fの組み合わせによりCLK/CYC転写活性が抑制されることを明らかにした。また、cry2 RNAiにより、per, cycは無周期となるがtim発現リズムは継続すること、tim RNAiではperは無周期となるがcry2の発現リズムは継続することを明かにした。以上の事実はcry2の周期発現がper/timの振動系とは異なる系で制御されることを示唆する。 ②cycの周期発現機構の解析を進め、HR3 とE75の RNAi処理個体は、いずれも無処理個体と同様に夜行性のリズムを示したが、E75 RNAiではやや周期が短縮する傾向があった。HR3 RNAiでは、cyc発現量が夜間にやや増加し、tim の発現ピークがやや後退すること、また、E75RNAiでは、cycに加えてClkの発現にリズムが生ずることを明かにした。 ③Clkの発現制御系については、vriとPdp1のRNAiによる解析を進め、vri RNAiでは、活動リズムの周期が短縮すること、ClkやcycのmRNA発現リズムに変化が生じ、timの発現ピークが前進することを明らかにした。Pdp1 RNAiでは、歩行活動リズムに目立った変化は観察されなかったが、per、timの発現リズムの位相が前進することを明かにした。 ④cwoについては、RNAi処理後の発現量の定量のために必要な領域を取得し、RNAiの予備的実験を行った。 ⑤tim2については、cDNAを取得してmRNAの発現を解析し、雄は定常的な発現を、雌は夜間にピークを持つ発現リズムを示すことを明らかにした。またRNAiが有効であることを確認した。
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