研究実績の概要 |
本年度は、フタホシコオロギの概日時計の分子振動機構についての解析を進め、以下の結果を得た。 ①cry2(m-cry)については、cry1との2重RNAiにより光同調が阻害されることから、光依存性位相制御に重要な時計遺伝子であることが明かとなった。また、この上流に位置する因子として、c-fosが判明した。c-fos RNAiで光による位相変位が阻害されるがcry1, cry2のmRNAレベルは変化しなかったため、cry1、cry2の翻訳後制御が位相制御に関与する可能性が示唆された。 ②cwoについては、暗期にピークとなるmRNA発現リズムを示すこと、RNAiにより歩行活動リズムが約30%の個体で無周期となり、残りの個体も長周期を示すことが明かとなった。また、cwo RNAiによりtim の発現リズムはほとんど影響を受けないが、per, Clk, cyc は発現レベルが低下し、その発現も無周期となることが明かとなった。また、cwo RNAiによりvri, E75の発現が亢進することが分かった。これらの結果から、cwoがvri,E75を介して Clk, cycの発現レベルを制御し、概日リズムを制御することが示唆された。 ③tim2については、RNAiによる発現抑制で、明暗下で明期開始時の活動が有意に低下すること、恒暗条件下では高頻度でリズム分割が生じ、自由継続周期が有意に短縮することなどが明らかになった。分子レベルではtim2 RNAiにより、perとClkはmRNAレベルが低下し無周期となること、逆にcycは発現レベルが亢進し、リズムがより明瞭となること、timはほとんど影響を受けないことなどが明かとなった。 これまでの結果から、コオロギ時計機構は、per/tim、cry2、cyc、Clk、の各振動系を含む複合振動系であり、さらにこれをcwo、tim2が修飾することが明らかとなった。
|