研究課題
本年度は、Ca2+とCa2+感受性に関与するCLS遺伝子間の相互作用を、増殖だけでなく形態表現型の面から多次元的に捉えることにした。そのために、cls変異株について通常および高濃度Ca2+条件下の細胞形態を画像解析プログラムCalMorph により高次元形態表現型として定量化し、一般化線形モデルを適用することで、正または負のCa2+-cls変異間相互作用を定量的に評価した。正(表現型を回復させる)および負(表現型を悪化させる)のCa2+-cls変異間相互作用を定義することにより、62 cls変異株それぞれで209次元の正または負のCa2+-cls変異間相互作用の組み合わせからなるプロファイルを作成した。62 cls変異株において、Ca2+-cls変異間相互作用プロファイル間の相関係数に基づく階層クラスタリングを行ったところ、62中49 (79%)のcls変異株 が9つのクラスに分かれた。そのうち6クラスでは、既知の機能的に関連する遺伝子の変異株が集まっていた。このように、クラスタリング解析によって細胞内Ca2+恒常性維持やCa2+によって制御される機構の機能ユニットが9つ同定でき、また同時にCa2+-cls変異間相互作用プロファイルの特徴に各ユニットの機能に関する情報が現れていることが示唆された。最後にクラスタリング解析により同定された機能ユニット間に見られる相互関係を理解するために、Ca2+-cls変異間相互作用プロファイルの類似度に基づくネットワークを構築した。クラスIIIからIXのCa2+-cls変異間相互作用プロファイルの間には正の相関が見られる傾向にあり、クラスI およびIIのプロファイルは他の機能ユニットのプロファイルとの間に負の相関が見られる傾向にあった。本研究により、初めて化合物(Ca2+)と遺伝子(CLS)間の相互作用を高次元的に調べることができた。
1: 当初の計画以上に進展している
高次元表現型解析に一般化線形モデルを適用することで、パラメトリックな統計学的解析が可能になり、次々に新しい生物学的知見が得られている。当初この研究を計画した時よりも、はるかに研究成果が上がっている。
今までの方針通りに研究を進め、最終年度の研究課題の研究取りまとめを行う。特に研究を遂行する上での問題点はない。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 5件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件)
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