研究課題
出芽酵母の必須遺伝子に関する動作原理を明らかにすることを目的にして、本年度は必須遺伝子の条件致死変異株の形態表現型解析を行なった。高速高次元CalMorphシステムを使ってデータを取得した後に一般化線形モデルを導入することで、質の高い高次元形態表現型解析を行った。まず670の必須遺伝子を網羅する774のTS変異株(Ben-Aroya et al. 2008; Li et al. 2011; Costanzo et al. 2016)について、非制限温度条件下で培養した細胞からCalMorphシステムを使って形態表現型情報を新たに取得した。次に「形態異常度」と「形態プロファイル」の二つの観点から必須遺伝子TS株の形態表現型解析を行なった。解析したほとんどの必須遺伝子TS変異株は非制限温度条件下であっても、意外なことに顕著な形態異常を示すことがわかった。なぜそれほどまでに大きな形態異常を示したのかを明らかにするために、形態異常度と遺伝子属性の間の関係を調べたところ、両者の間に有意な相関は見られなかった。従って、TS変異株の形態異常度の強さは、遺伝子の機能的特徴を示すというよりも、変異アレルによる機能欠損の影響を反映していると考えられた。一方必須遺伝子のTS変異株が示す形態プロファイルに関しては、ほとんどの場合、既知の遺伝子機能によって説明できるということがわかった。TS変異株間の形態プロファイルの類似度の相関は遺伝子間の機能的関係を反映していることが示唆された。今後の展望として、これまで抗真菌薬などの薬剤標的の形態プロファイリングには非必須遺伝子欠損株の形態情報が用いられてきたが、増殖に必須な遺伝子産物が標的になる場合には、必須遺伝子TS変異株の形態プロファイルを用いることでより正確な標的予測が可能になることが期待される。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
BMC Genomics
巻: 19 ページ: 149
10.1186/s12864-018-4526-z
Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 114 ページ: 12219-12224
10.1073/pnas.1710351114
Nat Chem Biol
巻: 13 ページ: 1286
10.1038/nchembio.2436
G3 (Bethesda)
巻: 7 ページ: 2807-2820
10.1534/g3.117.044099
Mol Biol Cell
巻: 28 ページ: 3415-3427
10.1091/mbc.E17-04-0216
MBio
巻: 8 ページ: e00619-17
10.1128/mBio.00619-17