研究課題
次世代シーケンサーによって得られた大量のゲノム・トランスクリプトームのデータをもとに、分割イントロンの候補を探索するためのプログラムを開発し、既存のGiardiaのデータに適用してその有効性を検証した。Giardiaにおいて既知の4つの分割イントロンを高いスコアで検出できることが分かったが、その他にも同程度のスコア値にて10個ほどの遺伝子が検出できたたため、現在、それらが真の分割イントロンであるかどうかを検証している。これまでに、スプライセオソーム構成因子であるタンパク質SmD1, SmD3, Lsm1にFLAGタグを付したコンストラクトをGiardiaに発現させることに成功していたため、それらを維持しながら基本的な解析を進めた。さらに、Giardiaの培養量をH27年度の3倍程度にまでスケールアップして、タグ付きSmD1に対するタグアフィニティーカラム精製によりSmD1と相互作用するタンパク質の網羅的同定を試みた。タグ付きSmD1の回収率を向上させることができたため、質量分析を行ったが、他生物で良く保存されているスプライセオソーム構成タンパク質の同定には至らなかった。Giardiaのスプライセオソーム構成タンパク質のレパートリーが哺乳類や酵母のものとは著しく異なっている可能性が示唆されたため、哺乳類・酵母で共通の50個程度のタンパク質それぞれに対して、Giardiaやその他の代表的な真核生物でのホモログを探索した。それをもとに、Giardiaにホモログが存在すると考えられた30個程度のタンパク質についてアライメント解析を行った。その結果、一部の例外を除きほとんどのタンパク質はホモログであることが判明した。したがって、スプライセオソームのコアとなるタンパク質についてはGiardiaでも保存されているものと考えられた。
3: やや遅れている
分割イントロンを検出するためのプログラムの開発と、Giardiaを含めた真核生物全体でのスプライセオソーム構成因子の進化を議論するための分子進化学的解析の面では、確実に成果をあげることができたと考えられる。しかしながら、Giardiaのスプライセオソームを精製するための実験的研究に関しては、大きな進捗が見られず、実験方法や実験計画の面で多くの課題を残す結果となった。
分割イントロンを検出するためのプログラムの開発研究については、Giardiaのデータでほぼ問題なく動作することが分かったので、今後は他生物に関しての適用可能性を検討する。Giardiaの近縁種には分割イントロンが存在する可能性が高いため、Giardiaと同じくフォルニカータ生物群に属する自由生活生物であるKipferliaに関して、次世代シーケンサーを用いたゲノム・トランスクリプトーム解析を行い、そのデータをもとにプログラムの妥当性を検証する。さらに、GiardiaやKipferliaにおいて候補となった遺伝子に関して、それらが確かに分割イントロンであることを実験的に検証する。Giardiaのスプライセオソームを精製するための実験については、方法論と実験計画の再検討をする必要がある。まず、N末側にタグを付したSmD3とLsm1に関しては、これまでのSmD1での実験と同様の実験を行い、タンパク質の種類を変えることで成功が導かれる可能性に期待する。一方、SmD1についてはタグをC末側に付したコンストラクトを作成し、タグの位置を変えることで成功が導かれる可能性に期待する。一方、タンパク質ではなくsnRNAを標的としたスプライセオソーム精製のストラテジーについても検討する。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Nature Ecology & Evolution
巻: 1 ページ: 0092
10.1038/s41559-017-0092