研究課題
熱水・冷湧水や鯨骨・沈木周辺堆積物を含む化学合成生物群集は、近年の深海生物研究の中心的存在である。しかし、少数の分類群を除き、これらの動物がいつどのような環境から化学合成系に進出したのか、現生型の深海化学合成群集がどの地質時代に成立したのかはよく分かっていない。本研究では、軟体動物門腹足綱の複数系統について、深海、干潟の嫌気環境および様々な好気環境の種を含めた網羅的な種間系統樹を作成し、化石記録と幼生生態の詳細な検討とあわせて、各環境への進出の絶対年代とルートに関しての傾向とその放散の要因を探る。平成28年度は、アマオブネ亜綱についてミトコンドリアゲノム解析の結果を論文化した。また、属・種レベルの詳細な解析について、結果を国際学会で発表した。さらに、ミジンハグルマ科を含む異鰓亜綱について、国際共同研究による系統解析を進め、国内外の学会大会で発表したほか、一部の成果を論文として出版した。また、干潟・マングローブ域を含む浅海の還元環境や好気環境に生息する種を採集するため、南西諸島での野外調査を行ったほか、沈木などの深海遺骸群集に関連して東北沖での漸深海トロール調査を継続実施、大きな成果を得た。遺骸群集系統のひとつ、ワダツミシロガサ上科の進化と生態的放散については、過去の知見のレビューも含めた包括的な論文を出版した。化石試料の収集と形態解析も順調に進めることができ、学会大会ほかにおいて発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
一部の系統について結果の論文化が遅れているが、試料の収集と解析については、概ね当初計画の通りである。
当初計画の通り、分子系統解析と化石記録の検討、形態比較ならびに幼生期を含めた生態に関する検討を継続、学会大会などで発表し、原著論文化する。特に、浮遊幼生期ならびに変態・着底後の殻(原殻/後成殻)について安定同位体比と微量元素の解析手法を確立し、着底稚貝の生活史復元を試みることを予定している。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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