研究課題
熱水・冷湧水や鯨骨・沈木周辺堆積物を含む化学合成生物群集は、近年の深海生物研究の中心的存在である。しかし、少数の分類群を除き、これらの動物がいつどのような環境から化学合成系に進出したのか、現生型の深海化学合成群集がどの地質時代に成立したのかはよく分かっていない。本研究では、軟体動物門腹足綱の複数系統について、深海、干潟の嫌気環境および様々な好気環境の種を含めた網羅的な種間系統樹を作成し、化石記録と幼生生態の詳細な検討とあわせて、各環境への進出の絶対年代とルートに関しての傾向とその放散の要因を探った。平成29年度には、これまでに得た成果を11編の論文として公表できた。特に、発生初期の生息環境復元に関して、ミョウジンシンカイフネアマガイの浮遊幼生飼育実施結果をEcology誌にて公表したほか、原殻安定同位体比と微量元素の解析手法をいずれも世界で始めて確立し、着底稚貝の生活史復元に成功した。後者については、国内外の学会等で発表し、論文化に向けて現在鋭意準備中である。また、深海性腹足類の上位系統・種内の集団解析についても、それぞれ原著論文として公表した。異鰓亜綱については、ドイツの共同研究者を学術振興会特別研究員制度により受け入れ、試料の収集と形態・分子系統解析を大きく進めることができた。また、干潟・マングローブ域を含む浅海の還元環境や好気環境に生息する種を採集するため、国内外での野外調査を行ったほか、深海遺骸群集に関連して東北沖での漸深海トロール調査を継続、大きな成果を得た。化石試料の収集と形態解析も順調に進めることができ、学会大会ほかにおいて発表を行ったうえ、複数の論文として出版できた。上記により得られた試料ならびに解析データは、平成30年度からの基盤研究(B)課題「深海ベントスの分布と幼生生態:化学合成群集と海溝最深部動物相の進化を探る」にて活用する。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 7件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom
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