研究課題
本研究では,フジツボ類を題材に,生物界でみられる多様な性表現の意義と維持機構について,実証研究と理論研究の両面から明らかにすることを目的としている。最終年度は,以下の研究を行った。(1)遺伝マーカーの開発をオノガタウスエボシについて行った。ゲノムDNAからショットガンライブラリーを作製し,次世代DNAシーケンサーを使ってシーケンスリード(塩基配列)を取得した。マイクロサテライト(MS)領域を探索し,リピートユニットが2から6塩基までという制約をつけて利用に適したMSマーカー候補を選定したところ,344個のマーカー候補が選ばれた。うち一部についてPCRプライマーを設計し,実際のサンプルを用いてスクリーニングを行った結果,10個程度のマーカーが開発された。(2)ハサミエボシについて,同様の手法で開発したMSマーカーを用いて約10集団について父性判定を行った。その結果,矮雄は雌雄同体の雄機能の同等以上の繁殖成功を得ていることが示唆された。また,矮雄と雌雄同体の生活史を比較するために室内飼育を試み,潮汐を模した実験水槽で3か月程度の飼育に成功した。(3)深海性のミョウガガイ類について,多くの標本を入手した。それらを解剖し,10種について矮雄の着生位置やその他の繁殖形質について,新たに知見を得た。(4)フジツボ類の性表現に関する理論的研究を取りまとめた。またそれらを発展させ,生活史に沿った性配分の変化という視点から,海産無脊椎動物についての一般化を試みた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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