研究分担者 |
深谷 肇一 統計数理研究所, データ科学研究系, 外来研究員(JSPS特別研究員) (30708798)
大原 雅 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (90194274)
金子 有子 東洋大学, 文学部, 准教授 (90280817)
横溝 裕行 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (30550074)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析に供与する生活史行列の抽出については、昨年度に雇用したポスドクが開発した計算加工のためのコンピュータープログラムを用い,COMPADREデータベースから生活史行列の整理・抽出がなされた.その結果,高田、横溝担当の研究テーマ用行列が用意された.今後、不足している深谷,金子の研究テーマで扱う行列抽出を行うが、概ね解析研究に必要な行列抽出は完成した. 「個体群成長率と平均寿命の関係の解析」においては、昨年度開発した計算加工のためのコンピュータープログラムを用いて植物集団生活史行列の個体群成長率、弾性度、平均寿命を求め、実際の生物集団の結果と、ランダムに要素を与えた生活史行列の結果の比較を行った。また、約7000個の植物集団の弾性度解析結果と過去の弾性度解析の結果を比較した。これらの結果は、数理生物学会年会において発表され、現在国際学術誌への投稿を目指して論文執筆中である。 「外来植物の個体群増加率と導入からの経過時間との関係の解析」では、外来植物の個体群増加率と導入からの経過時間の関係等を調べ、侵入種管理に効果的な対策を理解する情報が明らかになった。この成果は、国際学会で発表され、また投稿論文が受理され現在印刷中である。さらに、弾性度解析において、行列要素だけではなくvital rateにも着目して解析を行う予定だった。また、個体の流れ行列との関係について解析を行い予定であった。しかし、植物の生活史行列に関するデータベースでは詳細な文献調査が必要なために解析が少々遅れている。「齢構成行列に基づく標準化された種間比較研究」では、コンピュータシミュレーションによって、既存手法を用いた齢固有パラメータや個体群成長率の推定にステージ推移確率の齢依存性が及ぼす影響の調査が完了している。また、琵琶湖の侵略的外来水生植物3種の解析については生活史行列の推定作業に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度遅れていた研究進捗状況も改善されたため、新たに、「弾性度と個体群増加率および植物の生活史タイプの関係の解析」に着手する.このプログラム開発作業は,深谷が担当する.また,実際の計算作業は,高田,大原,金子の3名が分担して行う.ランダム行列を対象にした場合と,抽出された生活史行列1637個を生活史タイプ別にした場合の分布を求める.この一連の計算のプログラムはかなり複雑なものになると予想されるため,作成作業は横溝が担当する. 「個体の流れ行列と個体群増加率の関係の解析」については、昨年度予定されていながら遅れていたこの研究に着手する.まず,各植物種の行列およびランダム行列から個体の流れ行列を算出する.実際の計算作業は,高田,大原,金子の3名が分担して行う.また,個体の流れ行列の要素の総計が個体群増加率になる性質を利用して,三角錐体上に,各植物種の個体の流れベクトルをプロットする.この作成作業は横溝が担当する. 「外来侵入種における個体の流れ行列,vital rate弾力性と侵入後経過時間との関係」については、解析準備で供された生活史行列の中から外来侵入種の行列を選び出し,個体の流れ行列,弾力性と侵入後経過時間の相関の有無を解析する.すでに弾力性との関係については計算結果が求められているため,さらに個体の流れ行列との関係について解析を行い,英文論文として発表する.このプログラム開発,文献情報検索,数値解析は分担者の横溝が担当する. 「齢構成行列に基づく標準化された種間比較研究」では、齢構成行列の推定方法を開発するために、齢依存性を考慮した統計モデルによる推定アプローチを検討する。この解析は分担者の深谷が担当する。 また、琵琶湖の侵略的外来水生植物3種の解析については、GISデータから生活史行列を完成させて解析を行い、外来種の特徴を検証する。この解析は分担者の金子が担当する。
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