研究課題
本年度は最終年度であるが、動的行動の理論の応用として、昆虫の害虫化が理論的にベット・ヘッジによる絶滅回避で説明できることを示した。害虫は古くからよく分散することが知られている。これは分散により、新しい繁殖地を見つけるためと理解されてきた。しかし、農作物の田畑は害虫にとっての生息場所と考えると、殺虫剤散布や収穫により絶滅リスクが高いことが想定される。ニカメイチュウは虫が稲の茎の中を食べて成長するが、代替の野生植物がなく、稲だけを食草としている。このような純粋な害虫の場合、一つの生息地(水田・畑)にメスが全部の卵を産卵すると、殺虫剤散布や収穫で全滅しやすい。農作物の収穫は季節的に同一の地域では同じ時期に行う。また、害虫駆除のための殺虫剤散布も近隣で同時に実施することも多い。この場合には、同一地域で産卵する限り、そのメスの産卵した卵はすべて同じように死滅する可能性が高い。これを回避するには、同期的に害虫駆除や農作物の収穫が実施されないほど遠距離に分散する必要がある。本論文では、この分散は、従来の適応進化の基準の〔算術〕平均適応度は相当低くなるが、幾何平均適応度(長期平均成長率)を最大化することにより、絶滅を回避できることを数理解析とシミュレーションにより立証した(Ecological Researchに掲載)。動的最適化としては、コオロギの配偶者探索において、距離(かかる時間)が遠い程、危険が加算されるので配偶者のトータルの価値が下がることを見出した。これは、動的行動のおける未来利益の割引の減少で、コオロギではこの動的最適化には学習が必要ないことを照明した。このほか周期ゼミの進化、植物の群落の多種共存の維持など進化・共存に関する多くの論文を合計13報(英文12報、和文1報)掲載(または採択)にこぎつけた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 7件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 12件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
COMMUNICATIONS BIOLOGY
巻: 2019(2) ページ: 1-9
10.1038/s42003-018-0256-7
Physiological Entomology
巻: 2019 ページ: 1-7
10.1111/phen.12281
Journal of the Royal Society Interface
巻: 16 ページ: 1-7
10.1098/rsif.2018.0850
Molecular Biology and Evolution
巻: 2019 ページ: 1-14
10.1093/molbev/msz051
Communications Biology
巻: 2018(1) ページ: 1-14
10.1038/s42003-018-0025-7
Ecology and Evolution
巻: 2018 ページ: 1-10
10.1002/ece3.4093
Scientific Reports
巻: (2018)8 ページ: 1-7
10.1038/s41598-018-25436-2
Ecological Research
巻: 33 ページ: 1-7
10.1007/s11284-018-1615-z
莎草研究
巻: 20 ページ: 63-70
J. Ethology
巻: 2018 ページ: 1-5
10.1007/s10164-018-0552-1
PeerJ
巻: 6 ページ: 1-23
10.7717/peerj.5282
PLOS ONE
巻: 2018 ページ: 1-13
10.1371/journal.pone.0204628
Ecological Modelling
巻: 388 (2018) ページ: 80-87
10.1016/j.ecolmodel.2018.09.021
https://wwp.shizuoka.ac.jp/yoshimurajin/home/