現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オカダトカゲがシマヘビの色彩を学習し回避することについては、オカダトカゲが捕食者の形質を認知し、捕食を回避する行動と学習による可塑性が、捕食者の色彩が多型を呈する個体群ほど発達しているかどうかを、ヘビモデルを用いた各島での行動実験によって確かめた。その結果以下のごとく特筆すべき成果を得ることができた。 第1の行動実験は、伊豆諸島の新島, 神津島, 八丈小島(シマヘビの色彩型は, 多型, 単型, 非生息) で行った。異なる色彩パタン(Stripe,Pale-Stripe, Non-Stripe) を塗布したシマヘビモデル、黒色(Melanistic) モデルと、黒・黄・赤のトリコロールモデルをオカダトカゲに提示し、モデルに慣れて近寄るまでの所要時間を各色彩型に対する警戒度として定量し、視覚的捕食者認知能力が3 島で適応的に分化しているかを検証した。新島のシマヘビ個体群に見られる色彩多型維持に焦点を当てた実験では、実験地点から半径200 mの範囲内で捕獲・目撃されたシマヘビの色彩型頻度を集計した。 定量化した警戒度とシマヘビデータを解析し、1)色彩型頻度が高くなる程オカダトカゲの警戒度合いは、同所的に生息する捕食者に応じて適応分化していることが示唆された。そして、2)同所的に生息しない捕食者の色彩型でも派手であれば強く警戒すると同時にヘビ側に対する強い淘汰圧となる(普遍性を有する) こと、3)新島のシマヘビに見られる色彩多型は、オカダトカゲの視覚的捕食者認知が, 多数派の色彩型を有するシマヘビの捕食成功率を下げ、捕食者の色彩多型維持における負の頻度依存選択の役割を果たす可能性を初めて導いた。
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