研究課題/領域番号 |
15H04433
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
岡崎 桂一 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20270936)
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研究分担者 |
深井 英吾 新潟大学, 自然科学系, 助教 (00570657)
柿崎 智博 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜茶業研究所, 研究員 (30547229)
藤本 龍 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60620375)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 春化 / キャベツ / ハクサイ / イントログレッション / エピゲノム |
研究実績の概要 |
1.緑体春化型ハクサイのゲノムde novoシークセンスデータからキャベツ由来の導入染色体部分(置換)を明らかにするためのコンピューターソフトを構築した。それを用いてハクサイのAゲノムバックグラウンドへ導入されたキャベツ由来染色体部分を同定できた。 2.発現解析では,ハクサイ,キャベツ,緑体春化型ハクサイ,3系統の1~3葉展開個体を用いて,低温処理前,後,低温処理後室温で2週間育てた区の3つの処理区から,本葉由来のmRNAを用いてFLCなど開花関連遺伝子の発現解析をq-PCRで実施した。その結果,ハクサイのBrFLC2は低温処理によって低下調節され,その後,発現は低下したままであったが,キャベツのBoFLC2および緑体春化型ハクサイにキャベツから導入されたBoFLC2は低下調節されなかった。いくつかあるFLCホモログのうち,キャベツではBoFLC2が花芽抑制遺伝子と考えられているので,緑体春化型ハクサイの開花習性に導入されたBoFLC2の発現が関係していることが示唆された。 3.キャベツDH系統・MP-22を用いて9葉齢、11葉齢,13葉齢、14葉齢の4ステージの植物体について,非低温処理下でのBoFLC1,BoFLC2,BoFLC4の発現レベルを,RNAseqにより分析したが,3つのFLCホモログの発現レベルには4ステージで変化がなかった。今後,低温処理後の発現解析を行う。 4. エピゲノム解析では,ハクサイの低温処理前後において、BrFLC領域のH3K27me3の状態についてクロマチン免疫沈降法により調べた。その結果、BrFLC1、2、3については、全て春化処理により発現が抑制され、かつ、H3K27me3の蓄積が見られた。以上の結果から,ハクサイではシロイヌナズナ同様、春化処理により、H3K27me3が蓄積することでFLCの転写が活性型から抑制型へと変化することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していた遺伝解析材料の準備,緑体春化型ハクサイのde noveシークエンス解析,q-PCRによる開花関連遺伝子の発現解析の一部,エピゲノム解析の一部を実施できたので,所期の目的を達成していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
28年度には,1)種子春化型×緑体春化型ハクサイの交雑ならびに種子春化型自然ナプス×緑体春化型合成ナプスの交雑から育成したそれぞれのF2集団を用い,春化特性を決定している遺伝機構についてQTL解析を行う。2)ハクサイのAゲノムバックグラウンドへ導入されたCゲノム染色体断片(A2染色体に導入されているのは確認済み)の領域サイズを異にする種々の緑体春化型ハクサイ系統を用い,導入されたCゲノム染色体断片上に位置する遺伝子の効果を見る。3)キャベツ,緑体春化型ハクサイについて,低温処理前と処理期間中にわけて,LEY,FLC,FTオルソログならびにBoFLC をターゲットにするsRNAやnon-coding RNAの発現を,q-PCRあるいはRNA-seq で解析する。4) エピゲノム解析では,種子春化型ハクサイと緑体春化型ハクサイを用いて,春化前のクロマチン修飾状態と春化後のクロマチン修飾状態を ヒストンのリジン残基(H3K4me2、H3K9me2、H3K27me3、H3K36me3)について調査する。
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