研究課題/領域番号 |
15H04434
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中園 幹生 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70282697)
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研究分担者 |
間野 吉郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, ユニット長 (20355126)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トウモロコシ / テオシント / 耐湿性遺伝子 / 酸素漏出バリア / マッピング |
研究実績の概要 |
トウモロコシの近縁種であるZea nicaraguensisは強固な酸素漏出バリア(ROLバリア)を形成するのに対し、トウモロコシは部分的なROLバリアしか形成しない。Z. nicaraguensisのROLバリア形成を制御する染色体領域を特定するために、トウモロコシを遺伝的背景にZ. nicaraguensisの染色体断片を置換した染色体断片置換系統(introgression line、IL)シリーズ(42系統)のROLバリア形成能を評価した。その結果、1系統(系統名IL#11)のみがROLバリア形成を示し、他の系統との比較解析から、Z. nicaraguensis由来の3番染色体短腕上の領域にROLバリア形成の制御に関わる遺伝子座が座乗していることが明らかになった。 さらに、好気条件または嫌気還元条件下でトウモロコシとZ. nicaraguensisを生育させて、ROLバリア形成時の根表層の構造変化について観察および分析を行った。これまでに、ROLバリア形成には根の表層細胞の細胞壁におけるスベリン化やリグニン化、また、細胞間隙における物質の蓄積などの関与が示唆されてきた。そこで、トウモロコシとZ. nicaraguensisの根を用いて、組織化学的な染色、分析化学的な解析、および透過型電子顕微鏡による観察を行うことで、これらの物質の蓄積の比較解析を行った。その結果、Z. nicaraguensisの根のROLバリア形成時に特異的に、根の表層での特定のスベリン単量体成分(炭素数28と30のω-水酸化脂肪酸)の高蓄積、および表皮細胞と外皮細胞の間の細胞間隙(中葉)における物質の蓄積が起こっていることが明らかになった。これらの根の表層構造の変化は強固なROLバリアを形成するイネと同様であり、スベリンの単量体成分の変化、あるいは細胞間隙への物質の蓄積が強固なROLバリア形成に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、Z. nicaraguensis由来のROLバリア形成遺伝子領域をマッピングし、候補領域が3番染色体短腕上に座乗していることを明らかにした。さらに、ROLバリアの構成物質として予想されているスベリンとリグニンの染色を行い、スベリンとリグニンの染色パターンとROLバリア形成パターンとの間に相関があるかどうかを調査した。
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今後の研究の推進方策 |
第3染色体の短腕の候補領域で組換えが起こっている系統のROLバリア形成能を評価して、ROLバリア形成制御遺伝子領域近傍のDNAマーカーを作出する。候補領域のマーカー数が不足する場合には、すでに得られているZ. nicaraguensisのゲノム情報からプライマーを設計してマーカーを作出することで対応する。さらに、RNA-Seqにより同定したIL#11(もしくはその兄弟系統)とZ. nicaraguensisにおいて特異的に発現する遺伝子の根における詳細な発現解析を行う。まず、嫌気還元条件下で生育させた根を先端から1 cm毎に分離して、各部位における候補遺伝子の発現を定量RT-PCR法により調査する。また、レーザーマイクロダイセクションにて根の外層、皮層、中心柱を回収し、各組織由来のRNAを用いて遺伝子発現解析を行うことによって、ROLバリア形成が開始される根端3 cm付近の外層特異的に発現する遺伝子を探索する。
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