研究実績の概要 |
最強の加害力を有するトビイロウンカ個体群に対しても, 吸汁抑制作用が持続している高度抵抗性の在来品種が存在するが, その遺伝的基盤は不明である. 本研究の目的は, まず, (1) 高度抵抗性品種のゲノムの一部を置換することにより高度抵抗性に必須な未知のゲノム領域の特定をめざす. 次に, (2) 既知の抵抗性遺伝子群の集積育種を行い遺伝子集積効果を検証する. 最後に, (3) 複数の抵抗性品種のゲノムを再編成させた上で高度抵抗性個体を選抜し, その全ゲノム遺伝子型構成を明らかにすることである. 本年度は, 以下の3つの小課題、(1)トビイロウンカ高度抵抗性品種PTB33が保有する高度抵抗性に関与するゲノム領域の特定、(2)既知のトビイロウンカ抵抗性遺伝子の3遺伝子集積効果の検証、(3)ゲノムシャッフリングによるトビイロウンカ高度抵抗性系統の作出、を遂行した。 まず、高度抵抗性在来品種と優良品種のF1に在来品種を戻し交雑して得られる戻し交雑自殖F2個体群 を育成し、これらを用いて高度抵抗性に関与するゲノム領域を推定した。次に, (2)近似同質遺伝子系統 (NILs)間の複交雑とマーカー選抜により, 3遺伝子座における抵抗性アリル 集積系統を育成した. これまでに同定された4つのゲノム領域に座乗する6つの遺伝子座を対象とし, 異なる遺伝子型構成をもつ3遺伝子集積系統について, 加害性の異なるトビイロウンカに対する抵抗性強度を検証した. 最後に, (3) 抵抗性の遺伝的基盤が異なると推察される高度抵抗性品種を選び, これらの交雑雑種の複交雑に由来する遺伝子集積個体の育成を目指した。 その結果、PTB33のトビイロウンカ高度抵抗性には、染色体4と染色体6上のQTLが関与しており、 これらの研究結果を統合して, 優良品種の主要特性を有する複数の新規高度抵抗性育種素材を作出した。
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