研究課題/領域番号 |
15H04443
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
深山 浩 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (60373255)
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研究分担者 |
松村 浩由 立命館大学, 生命科学部, 教授 (30324809)
谷口 洋二郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 主任研究員 (50462560)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光合成 / Rubisco / バイオテクノロジー / 酵素 / 結晶構造 |
研究実績の概要 |
ソルガムRbcS高発現・イネRbcSノックアウトCRISPR/Cas9イネの作出に成功し,完全にソルガムRbcSに置き換わったRubiscoを 発現し,Rubisco量が適度に減少した系統が得られた.その2重形質転換イネで発現するRubiscoの酵素特性を解析したところ,触媒速度は野生型の約2倍,CO2に対するKmは2.4倍に増加した.つまり,完全なソルガムRbcSとイネRbcLのハイブリッドRubiscoにすることで,酵素特性をC4高活性型Rubiscoに近づけることに成功した. ソルガムRbcSとイネRbcLのハイブリッドRubiscoの結晶構造を2.1Aの分解能で決定した.1.75Aの分解能で決定したイネRubiscoと比較すると,ハイブリッドRubiscoは硫酸イオンの結合数,触媒サイトの構造において違いがあることが明らかとなった. Rubiscoの結晶構造解析からイネRbcSに存在するIle101が,ソルガムRbcSにおいてLeu101となることで,Rubiscoの触媒サイト の構造変化が生じて触媒速度が増加することが示唆された. 多収性日印交雑品種タカナリを背景とするソルガムRbcS高発現イネの作出に成功した.この系統の光合成速度はタカナリより も高い傾向が得られた. ネピアグラスRbcS,ギニアグラスRbcSを高発現する形質転換イネの作出に成功した.いずれもRubiscoの触媒速度は増加する ことが明らかとなった.しかし,ネピアグラスに関してはイネRbcSと同様に101番目にアミノ酸はイソロイシンであった.このことからネピアグラスRbcSは他のC4RbcSと異なるメカニズムによりRubisco触媒速度を増加させていることが予想された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ソルガムRbcS高発現イネで発現するイネRbcSをCRISPR/Cas9法で完全にノックアウトすることに成功している.それにより,形質転換イネで発現するRbcSをソルガムRbcSに完全に置換することに成功するとともに,Rubisco量を適度に減少させることに成功している.この点は大きな進歩である. ソルガムRbcSとイネRbcLのハイブリッドRubiscoの結晶構造を2.1Aの分解能で決定することに成功した.これは大きな研究成果である.Rubiscoの結晶構造はこれまでいくつかの光合成生物で決定されてきたが,触媒特性を決めるメカニズムを明確に示した研究結果はなかった.我々が得た結果は,Rubiscoの構造と機能を結びつけることのできる決定的な結果であると思われる. 多収性日印交雑品種タカナリを背景とするソルガムRbcS高発現イネの作出に成功した.研究計画を作成した当初は,ソルガムRbcSの高発現だけでは光合成特性は変わらないと予想していたが,この系統の光合成速度はタカナリより も高い傾向が得られた.このことは,ソルガムRbcS高発現の効果がイネの品種によって異なることを示唆しており,大変興味深い結果である. ネピアグラスRbcS,ギニアグラスRbcSを高発現する形質転換イネの作出に成功し,いずれもRubiscoの触媒速度が増加することが明らかとなった.本年度得られた結晶構造解析の結果から,ネピアグラスに関しては異なるメカニズムでRubiscoを高活性型にすることが示唆された.今後,新たな研究に発展する可能性のある重要な知見を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
ソルガムRbcS高発現・イネRbcSノックアウトCRISPR/Cas9イネの作出に成功し,完全にソルガムRbcSに置き換わったRubiscoを 発現し,Rubisco量が適度に減少した系統が得られた.本年度はこの系統を用いて,成長解析,光合成特性の解析を行う. Rubiscoの結晶構造解析からイネRbcSに存在するIle101が,ソルガムRbcSにおいてLeu101となることで,Rubiscoの触媒サイト の構造変化が生じて触媒速度が増加することが示唆された.本年度はソルガムRubiscoの結晶構造解析を行い,イネRubiscoなら びにソルガムRbcSとイネRbcLのハイブリッドRubiscoとの構造の比較を行う. 多収性日印交雑品種タカナリを背景とするソルガムRbcS高発現イネの作出に成功した.この系統の光合成速度はタカナリより も高い傾向が得られている.本年度は,結果の再現性の確認を行うとともに,より詳細な光合成特性の解析を行う. ネピアグラスRbcS,ギニアグラスRbcSを高発現する形質転換イネの作出に成功した.いずれもRubiscoの触媒速度は増加することが明らかとなった.しかし,ネピアグラスに関してはイネRbcSと同様に101番目にアミノ酸はイソロイシンであった.この ことからネピアグラスRbcSは他のC4RbcSと異なるメカニズムによりRubisco触媒速度を増加させていることが予想される.そこで,結晶構造解析に向けてネピアグラスRbcS高発現イネRbcSノックダウン形質転換イネの作出を行う.
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