我が国の自給率向上を考える時、ダイズの94%を輸入に頼るのではなく、水田転換畑を活用して増産を図ることが必須である。しかし、ダイズは出芽期の梅雨による湿害に起因する収量低下が問題となって、生産拡大が進んでいない。そこで、出芽期の冠水抵抗性および除水後の回復過程をオミクス技術で解明し、シミュレイション法で絞り込んだ遺伝子について分子生物学的に検証する。 1.ダイズ出芽期の耐湿性を制御する遺伝子の同定と耐湿性を付与する技術の開発 前年度に得られたオミクス(プロテオミクス、トランスクリプトミクス、メタボロミクス)データを統合し、代謝マップに系統づけた。その結果、糖代謝からクエン酸回路が耐湿性を示すための中心を担っており、回復過程においても、少なくとも、同様なシステムが関与していることが明らかになった。酵素活性の結果を合わせることにより、ヘキソキナーゼとホスフォフルクトキナーゼによる制御が重要であることを示唆した。 2.ダイズ出芽期のオミクスネットワーク解析と耐湿性遺伝子群の抽出技術の開発 前年度に構築した冠水時のダイズのタンパク質群を用いたシミュレイターを利用して、冠水抵抗性突然変異ダイズやアブシジン酸を添加して冠水抵抗性を付加した場合に適用できるかどうか解析した。結果として、利用可能であり、グリセールアルデヒド三リン酸脱水素酵素(GAPDH)、アコニターゼ、二オキソグルタレート脱水素酵素等が鍵タンパク質であった。さらに、転写レベルでの変動を調査し、GAPDHの重要性を示唆した。
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