(1)室内実験系の検討 室内実験系により安定的に圃場の抑制効果を再現する条件を検討した。供試種子については、種子を次亜塩素酸で殺菌すると採取年や休眠覚醒の有無にかかわらず比較的安定した結果が得られた。2017年に圃場から採取した風乾土は、2015年に採取した風乾土の結果と同様な結果が得られたが、2016年に採取した風乾土には発芽阻害効果が認められなかった。2016年採取土は過乾燥により微生物相が影響を受けた可能性があり、生土を使った場合の再現性も含めて採取土壌の条件検討が必要であった。米ぬかと土壌ろ液の混合比率を検討した結果、米ぬか0.4gと土壌ろ液1mLを反応液で混合すると土壌間差が認められた。 (2)コナギ発芽阻害に関与する微生物の同定 上記の室内実験系で作成した土壌ろ液について、ろ液中の細菌のDNAを単離し、PCR-DGGE法でrRNAのバンドパターンを比較し、コナギ発芽阻害活性と相関するrRNAのバンドを検討した。数本の候補となるバンドを切り出して塩基配列を決定し、BLAST検索した結果、Clostridium属菌が同定された。しかし配列をもとに特異的PCRプライマーを設計し、水稲有機栽培試験圃場の表層1cmの土壌から採取したDNAから同菌の検出を試みたところ、増殖効率が低く、圃場の抑草効果との相関が認められなかった。 (3)コナギ発芽阻害物質の同定 発芽阻害が認められた土壌ろ液と米ぬかの培養液をろ過滅菌したところ、滅菌後の培養液にもコナギ発芽阻害効果が認められたことから、培養液に何らかの発芽阻害物質が含まれると考えられた。酢酸エチルを使って培養液を酸性分画とアルカリ分画に分けたところ、蒸発乾固の過程が発芽阻害効果に影響を与えることが判明した。このため蒸発乾固にかわる分離手法など分画条件の検討が必要であった。
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