研究課題/領域番号 |
15H04451
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
安田 剛志 (高崎剛志) 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30314511)
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研究分担者 |
藤本 龍 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60620375)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 園芸学 / 植物 / ゲノム / 細胞・組織 / 自家不和合性 / ニホンナシ |
研究実績の概要 |
ニホンナシの「自家不和合性」を制御するSハプロタイプには雌ずい側S因子であるS-RNaseと花粉側S因子となる複数のF-boxタンパク質遺伝子(PpSFBB)がコードされている。本研究では、ニホンナシの9つのハプロタイプにコードされるPpSFBB群を掌握し、それらが分担してS-RNaseを無毒化する機構をDNA、RNA、タンパク質、細胞レベルで包括的に解析することを目的としている。 本年度は、S3-とS4-RNase周辺領域のBACコンティグを染色体歩行により上流・下流域に150~200 kb拡張し、これら領域の存在するPpSFBBをPCRクローニングした。次世代シークエンサーPacBio RSIIを用いてBACクローンを解析し、S2-RNase周辺領域の663kbの完全長ゲノム配列を決定した。これを参照配列としてS2ホモ花粉のRNA-seqデータをマッピングした結果、新たに1個のPpSFBB2を見出し、S2ハプロタイプには18個のPpSFBB2をコードされていることを明らかにした。これらのPpSFBB2の非翻訳領域からデザインしたプライマーセットを用いて、S1~S9ホモ花粉cDNAから各PpSFBBの対立遺伝子を増幅した。そのうち9個のプライマーセットにより全てのホモ花粉から84%以上の相同性を示す対立遺伝子が増幅された。これらPpSFBBはS1~S9-RNase以外のS-RNaseを認識している可能性が示唆された。 一方で、走査型と透過型電子顕微鏡観察によりS-RNaseを含む柱頭浸出液は柱頭分泌細胞からの分泌液と崩壊した乳頭細胞の細胞内容物が混ざり合うことで、生成されていることを明らかにした。FIB (集束イオンビーム加工装置)-SEM (走査型電顕)による花粉管全体微細構造を把握するため、カテキンとOsO4を使用したコントラストを増強する固定法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
S2-RNase周辺領域のゲノム配列を参照配列とし、S2ホモ花粉のRNA-seqのデータをマッピングすることによって、S2ハプロタイプがコードするPpSFBB2は掌握できた。また、S3-とS4-RNase周辺領域のBACコンティグの拡張やSホモ花粉からの各PpSFBB対立遺伝子のクローニングも順調に進んでいる。電子顕微鏡観察による柱頭浸出液の生成過程について論文発表をしている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、BACクローンの配列は制限酵素切断片をサブクローニングし、サブクローンの配列をアセンブルすることで、一年以上を費やして決定してきた。PacBio RSIIによる解析はその精度に問題があるとされていたが、カバレージを増やすことで既知の配列と一致が確認され、ギャップを埋めることができた。そこで、今年度はBACコンティグを拡張すると共に、未解読のBACクローンを次世代シークエンサーで解析し、ゲノム配列決定を加速させるとともに、S3-とS4-RNase周辺領域のBACコンティグを拡張する計画である。得られたPpSFBBの非翻訳領域の配列をもとにプライマーセットを設計し、増幅できていない対立遺伝子をクローニングし、その有無から各PpSFBBのS-RNaseに対する特異性を推定する計画である。一方で、明確な内部微細構造の相違を観察できると期待される受粉24時間後の和合・不和合花粉管についてFIB-SEM観察を実施する計画である。
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