研究実績の概要 |
ニホンナシの「自家不和合性」を制御するSハプロタイプには雌ずい側S因子であるS-RNaseと花粉側S因子となる複数のF-boxタンパク質遺伝子(PpSFBB)がコードされている. 本研究では, SハプロタイプにコードされるPpSFBB群を掌握し, それらがどのように分担してS-RNaseを無毒化するかを解析することを目的としている. 本年度は, S4-RNase周辺領域のBACコンティグの拡張・配列解析を更に進め, S4-RNase上流500kbから下流836kbまでS4BACコンティグ配列を決定した。その結果20個のPpSFBB4 (PpSFBB4-u1 ~ -u6, -d1 ~ -d14)が見出され、そのうち16個の推定アミノ酸配列はPpSFBB2 群と高い相同性を示した。S4-RNase下流612kb ~ 835kb とS2-RNase上流282kb ~ 527kb, S4-RNase上流290kb ~ 500kbとS2-RNase下流355kb ~ 482kbの各領域間の相同性は高く, ゲノム構造が保存されていたことから、S2とS4にコードされるPpSFBBをほぼ掌握できたと考えられた。また、S4smホモ花粉のRNA-seqデータのPpSFBB4群配列へのマッピングの結果、4d-1以外は全のPpSFBB4に配列変異が認められなかったことから, 4d-1のS1-RNaseに対する認識特異性が強く示唆された. 一方で, S1, S3, S5, S6, S7ホモ花粉のRNA-seqデータをPpSFBB2と4群配列にマッピングし、PpSFBB相同配列を網羅的に解析した。新たに85のPpSFBBの 完全長RNA-seq コンティグ配列を構築することができた。これらコンティグ配列が各ハプロタイプに存在することの確認をRT-PCRクローニングにより進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
S2とS4ハプロタイプにコードされるPpSFBBをほぼ掌握できた。これら配列をレファレンスとして構築したPpSFBB1, 3, 5, 6, 7群のRNA-seq コンティグ配列の取得することができており、研究計画は順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き, S3-RNase周辺領域のBACコンティグを拡張し, 次世代シークエンサーPacBio RSIIによる解析を進め, BACコンティグ配列を拡張する。S3ホモ花粉のRNA-seq データをBACコンティグ配列にマッピングすることで, S3ハプロタイプがコードするPpSFBB3群を掌握する。PpSFBB1, 5, 6, 7のRNA-seq コンティグ配列の存在をRT-PCRクローニングにより検証する. 一方で, 花粉管誘導組織の縦断面の試料をFIB-SEMで観察し, 受粉72時間後の和合・不和合花粉管の微細構造を把握する.
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