研究課題/領域番号 |
15H04452
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
鉄村 琢哉 宮崎大学, 農学部, 教授 (00227498)
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研究分担者 |
雉子谷 佳男 宮崎大学, 農学部, 教授 (10295199)
本勝 千歳 宮崎大学, 農学部, 准教授 (30381057)
田尾 龍太郎 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10211997)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 果樹 / カキ / わい性台木 / サイトカイニン / 園芸科学 |
研究実績の概要 |
研究代表者らが開発した台木‘MKR1’はカキ樹をわい化させるだけでなく、早期着花性、果実高生産性、生理的落果防止など実際栽培に有益な形質を穂木品種に与えることがわかり、全国のカキ主産17県の公設試験研究機関が参加する連絡試験が行われ、実用化間近である。今までの研究により‘MKR1’によるわい化の仕組みはリンゴ等のわい性台木とは異なることを明らかにしたが、主原因は全く不明であり、今後、栽培指針を示し、新規わい性台木を効率的に育種するための指標や分子マーカー等を開発するためには、その主原因を明らかにしなければならない。最近、サイトカイニン含量を高めた形質転換果樹がわい化することが示されたが、‘MKR1’台木樹はその形質転換体と非常に似た成長を示している。本研究では‘MKR1’台木の成長制御機構を、サイトカイニンの分析や組換え体の作出等を通じて明らかにする。 ‘MKR1’の根が活発に生産したサイトカイニンが地上部へ移動し、穂木に種々の現象を引き起こすことを明らかにすると同時に、それらの現象を生理学的・園芸学的に証明するため、以下の実験を行った。①接ぎ木苗(葉、枝および根)のサイトカイニン含量を測定した結果、わい性台木苗は実生台木苗より低かった。②リーフディスク法によりipt遺伝子導入を試み、一部のカルスにipt遺伝子が導入されていることを確認した。③低温(16℃)においても‘MKR1’試験管内シュートは発根することを明らかにした。④樹齢が進むにつれ‘太秋’実生台木樹の雄花着生率は増加したが、‘MKR1’台木樹はほとんど増加しなかったので、本年度(定植7年目)は同じ値になった。⑥3年生2重接ぎ木樹の調査結果、‘MKR1’中間台木樹が‘MKR1’台木樹と実生台木樹の中間の新梢成長をすることがわかった。⑦‘平核無’果実の肥大速度(成長)は台木により異なることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①苗の各部位のサイトカイニン含量をLC/MSを使用し測定する実験において、カキを材料とした報告事例はなかったものの、カキにおいてもiP、ZR、Z、iPRが測定可能であることがわかっただけでなく、オーキシン(IAA)も同時測定可能であることがわかった。②ipt遺伝子を導入したカルスの作出に成功した。③低温条件におけるMKR1シュートの試験管内発根および根の成長を明らかにした。④リアルタイムPCRを使用したDkFTの発現についてはプライマーの問題があり、具体的な成果は得られなかった。⑤サイトカイニンの影響を受けやすい雄花の着性状態について、‘太秋’樹の調査結果は予想していたものとなった。⑥2重接ぎ木樹の生育調査は当初予想したよりも異なる結果が示されてきているが、データそのものは非常に興味深いものである。⑦台木が果実の肥大速度に影響を及ぼすこと明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
①苗や成木の各部位(芽、葉、枝および根)のサイトカイニン(iP、ZR、ZおよびiPR)およびオーキシン(IAA)含量をLC/MSを使用して経時的に測定する。②ipt遺伝子を導入したカルスを用い、マニュアル等を参考に不定芽を得る実験を行う。③低温条件におけるMKR1シュートの試験管内発根および根の成長を明らかにできたので、今後は対照品種(‘太秋’や‘平核無’など)について同様の実験を行う。④DkFTの発現について、プライマーを変更し実験を行う。⑤雄花の着性状況について、引き続き‘太秋’樹を用いて調査を行う。⑥2重接ぎ木樹の生育調査を継続的に行う。⑦摘蕾方法を変え、台木が果実成長に及ぼす影響を調査する。
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