研究課題/領域番号 |
15H04453
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研究機関 | 公益財団法人岩手生物工学研究センター |
研究代表者 |
西原 昌宏 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 園芸資源研究部, 研究部長 (20390883)
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研究分担者 |
高橋 秀行 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 園芸資源研究部, 主任研究員 (00455247)
佐々木 伸大 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 園芸資源研究部, 主任研究員 (80422088)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 植物色素 / 花色 / 遺伝子組換え / ベタレイン / 代謝工学 |
研究実績の概要 |
ベタレイン色素による植物のエンジニアリング基盤の確立に向けて、タバコ、トレニア、リンドウ、ジャガイモ、トマトの形質転換体を作出し、解析を継続して進めている。ベタシアニン色素については、構成的発現プロモーターと花弁特異的プロモーターを用いて、花では、タバコ、トレニア、リンドウで花色改変、ベタシアニンの蓄積に成功した。また、構成的プロモーターと果実特異的プロモーターを用いてトマトの実で、構成的プロモーターと塊茎特異的プロモーターを用いてジャガイモのマイクロチューバーでベタシアニンの生産に成功している。タバコ、トマトにおいては後代の種子を採種し、外来遺伝子の発現、ベタシアニン蓄積の安定性、遺伝性を解析中である。ジャガイモについては閉鎖系温室へ順化し、栽培中であり、今後、塊茎での遺伝子発現、ベタシアニンの蓄積を解析する予定である。ベタキサンチン色素についてはシイタケチロシナーゼ遺伝子により塊茎特異的プロモーターを用いて、ジャガイモ塊茎での蓄積に成功しているが、花においては未達成であるため、現在、新たな花弁特異的プロモーターによるベクターを構築し、トレニア、タバコ、リンドウへの形質転換を進めている。タバコにおいては、構成的プロモーターを用いてベタキサンチンの蓄積を試みたが、葉でのベタキサンチンの蓄積が濃い系統では生育不良が認められ、ほとんどが開花に至らなかった。その中で1系統のみではあるが、開花が見られ、黄花の花が獲得されたため、後代の種子を採種した。これら作出中の形質転換体と後代について、次年度、解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
花、塊茎、果実ともにベタシアニン色素を蓄積した形質転換体の作出に成功している。今後、これら形質転換体の解析を進めることにより、植物におけるベタレイン色素エンジニアリングの基盤が構築されると期待される。ベタキサンチン色素についてはシイタケチロシナーゼ遺伝子を用いて塊茎での蓄積に成功したが、花や果実等については別の遺伝子と器官特異的プロモーターの組み合わせを用いて形質転換体の作出を進めており、最終年度までに結果が得られる見込みである。タバコについては黄花化した個体も得られているが、ベタキサンチンの蓄積によると思われる生育不良の問題があり、器官特異的プロモーターを利用したベクターコンストラクトを行い、再導入を諮っている。トレニア、リンドウについても形質転換体を作出中であり、ベタレインのエンジニアリングの可能性を最終年度までに追究できる予定であるため、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに作出した形質転換体におけるベタレインの動態(遺伝子発現と蓄積量、細胞内分布等)について、特に、花色改変への適用を中心に解析を勧める。また、トマトにおいてはRNA-seq等を活用して、網羅的遺伝子発現解析により、果実でのベタレイン蓄積の影響を調査する。各種の新規構築ベクター(ベタキサンチン蓄積用)については、トレニア、タバコで黄花化した形質転換体の作出、解析を行う予定である。タバコについては後代での安定性を確認し、生育への影響も調査対象とする。また、可能であればこれまでに作出したベタレイン蓄積植物を用いて、抗菌活性、耐虫性、機能性等の側面からの解析を進めることとする。
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