研究課題/領域番号 |
15H04461
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
堀 雅敏 東北大学, 農学研究科, 准教授 (70372307)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 昆虫 / コウチュウ目 / 寄主選択 / 味認識 / 植物化学物質 / ふ節 / 味覚 / 感覚子 |
研究実績の概要 |
ふ節味覚感覚子の存在有無の網羅的解明では、これまで未観察であったハムシ2亜科について、走査型顕微鏡観察により、その存在を明らかにした。これによりハムシ科全17亜科でふ節味覚感覚子の存在が確認され、ふ節味覚感覚子はハムシ科に普遍的に存在していることが明らかになった。ハムシ科以外の昆虫では、ナガヒラタムシ科、ハンミョウ科、オサムシ科、ゴミムシ科、ガムシ科、シデムシ科、コガネムシ科、クワガタムシ科、タマムシ科、コメツキムシ科、ホタル科、ジョウカイボン科、ベニボタル科、テントウムシ科、ゴミムシダマシ科、ツチハンミョウ科、カミキリモドキ科、アカハネムシ科について調査したが、ふ節味覚感覚子の存在が確認されたのはオサムシ科、カミキリモドキ科の一部の種のみであった。また、イチゴハムシのふ節味覚感覚子の内部構造を透過型電子顕微鏡で観察した結果、味覚細胞から伸びる樹状突起の存在が確認され、味覚感覚子であることが内部構造的にも裏付けられた。 ふ節味覚感覚子の味物質の受容性の解明では、イチゴハムシのふ節味覚感覚子が塩類やスクロースに対して電気生理応答を示すことが確認され、これらの味物質を受容していることが明らかになった。 寄主認識におけるふ節の役割の解明では、ふ節味覚感覚子の存在が明らかになっているハムシ科のイチゴハムシやヒメカメノコハムシがふ節により味を認識できるのに対して、ふ節味覚感覚子がないテントウムシ科のオオニジュウヤホシテントウはふ節で味を認識できないことを明らかにした。また、イチゴハムシはふ節だけで、寄主と非寄主の葉表面ワックスを識別できること、さらには、ふ節による味認識能力により、より好適な寄主を選択できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ハムシ科のすべての亜科でふ節味覚感覚子の存在を明らかにしたほか、ハムシ科以外の数多くのコウチュウ種についてもふ節味覚感覚子の存在の有無を調査した。これにより、ふ節味覚感覚子の存在がコウチュウ目ではあまり一般的な特徴ではなく、むしろハムシ科など一部の種にみられる特徴であることを明らかにすることができた。 また、コウチュウ目は体表が硬いため、透過型電子顕微鏡観察用の試料作製は難しいとされているが、非常に明瞭な内部構造の観察・撮影に成功し、外部形態観察でふ節味覚感覚子と推定していた感覚子が内部構造的にも味覚感覚子であることを裏付けることに成功した。 ふ節味覚感覚子の味物質に対する電気生理応答は、コウチュウ目においては糖に対する応答記録に成功した研究報告はこれまでにないが、本年度の研究により、この記録に成功した。 さらに、ふ節味覚感覚子がある種はふ節だけで味認識できるのに対して、持たない種はふ節で味認識できないことも明らかにできた。また、ふ節だけで寄主と非寄主の葉表面ワックスを認識できることも明らかにできた。 以上から、電気生理学・行動学的解析は計画通りに進んでおり、形態学的解析に関しては、調査種数が当初計画よりも多いなど、計画を上回る実施内容であったため、当初の計画以上に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
形態学的解析に関しては、イチゴハムシ以外の種について、ふ節味覚感覚子のTEM観察を行う。電気生理学的解析に関しては、イチゴハムシを用いて、苦味物質や寄主の葉表面物質に対する電気生理応答を調査し、ふ節味覚感覚子でこれらの物質を受容しているか明らかにする。行動学的解析に関しては、葉表面ワックスと葉表面滲出物とを組み合わせた葉表面物質全体を、ふ節でどの程度厳密に識別しているか明らかにする。
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