昨年度までの研究で、ハムシ科昆虫のふ節味覚感覚子は走査型電子顕微鏡(SEM)による外部形態観察から、大きく2つのタイプに分かれることを明らかにした。昨年度は、そのうちの一つであるイチゴハムシのふ節味覚感覚子の内部構造を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、SEMで味覚感覚子と推定していた感覚子が内部構造からも正しいことを裏付けていた。そこで本年度は、もう一つのタイプであるカメノコハムシのふ節味覚感覚子の内部構造を観察し、この感覚子も味覚感覚子であることを裏付けた。一方、感覚子の形状は類似しているものの先端に孔の存在がSEMで確認できないオオニジュウヤホシテントウのふ節感覚子は、TEM観察の結果、味覚感覚子ではなく機械感覚子であることが明らかになった。本年度および昨年度までの結果より、ふ節味覚感覚子の存在は特にハムシ科で発達した形質であり、コウチュウ目昆虫では一部の分類群に限られることが明らかになった。 昨年度はイチゴハムシのふ節味覚感覚子が、塩類およびスクロースを受容することを電気生理学的に明らかにしたが、本年度は、苦味物質も受容すること、さらには、寄主植物の葉表面物質も受容することを明らかにした。また、いずれの物質でも濃度依存的にスパイク頻度が増加することも確認している。さらに、ふ節味覚感覚子でもその存在位置により、物質の受容性が異なることも明らかにした。 昨年度までの研究で、イチゴハムシはふ節により寄主と非寄主の葉表面ワックスを識別できることを行動学的に明らかにしたが、本年度は葉表面の滲出物がワックスに加わることで、より識別能が向上するか調査した。結果としては、識別能の向上は見られず、ふ節による寄主の識別にはワックスのみが関与している可能性が示された。
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