研究課題
オカボノアカアブラムシ(以下アブラムシ)がイネ根に寄生すると誘導抵抗性として褐変が生じる。ところが褐変物質の前駆体であるセロトニンの蓄積が不自然に遅延し、アブラムシの寄生後2~4日間は低い濃度にとどまる。低濃度のセロトニンがアブラムシの生育を促進することを確認したことから、アブラムシはイネの防御反応を抑制することで抵抗性を弱めるばかりか、さらにこの抵抗性物質を逆手にとり自身の増殖に積極的に利用している可能性が示唆された。本研究ではこのアブラムシによるイネの誘導抵抗性を制御する機構を分子生物学的・生物有機化学的に解明することを目的とした。アブラムシがイネ根に寄生した際の植物における遺伝子発現動態と、サリチル酸(SA)やアブシジン酸処理したイネ根での遺伝子発現動態を比較調査した結果、処理4日後ではアブラムシを寄生させたイネ根の遺伝子変動とSA処理した根の遺伝子は類似することが判明し、SA処理はアブラムシ寄生による褐変を増大させることも解明できた。既にアブラムシ寄生後期(7日目以降)にSA蓄積量が増大することが判明していることから、アブラムシ寄生における褐変に係る遺伝子を除くためにSA処理とアブラムシ寄生を比較した。その結果、1.8倍以上の発現変動が観察された遺伝子は13存在した。処理7日後でも同様の傾向が確認されたが、処理4日後と7日後では特異的に発現する遺伝子はすべて異なっていた。そこで処理4日後に特異に発現した遺伝子の機能と発現様式からOrnithine decarboxylase(OD)が特異的に発現しているものと考えられた。この遺伝子は寄生前期(1-5日後)には対照区よりも発現量が多く、その後(7-10日後)は同程度に戻ることが判明した。ODは生体アミンの生合成に関わる遺伝子であることから、イネの誘導抵抗性の抑制はアミン類によって制御されていることが予想された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Pesticide Science
巻: 81 ページ: 191-197
http://www.cc.kochi-u.ac.jp/~tebayasi/