研究実績の概要 |
1.DNAマーカーを用いた野外二次寄生蜂群集の把握と識別法の確立 日本の農業環境でよく見られる一次寄生蜂種11種と二次寄生蜂種8種のmtCOI遺伝子の塩基配列を解析した。一次寄生蜂については、Aphidius colemani, A. gifuensis, A. transcaspicus, Ephedrus nacheri, Diaeretiella rapae, Lipolexis gracilis, Lysiphlebia japonicaなどを識別し、二次寄生蜂については、Dendrocerus laticeps, Asaphes suspensus, Pacyneuron aphidis, Alloxysta sp. nr brebis, A. sp. nr victrix, Phaenoglyphis villosa, Syrphophagus tachikawai, Syrphophagus sp.を識別した。これらについてDNAデータベース(INDS)への登録を行った。 2.アブラバチ類(一次寄生蜂種)間での二次寄生蜂種構成の比較 土着3種のアブラバチ類(ギフアブラバチ、ダイコンアブラバチ、ナケルクロアブラバチ)に寄生させたアブラムシを野外で1週間暴露した後、羽化した寄生蜂を調査した。また、コレマンアブラバチと土着2種(ナケルクロアブラバチ、フツウアブラコバチ)で同様に調査した。これらの結果から日本でよく見られる二次寄生蜂のうち回避できていた種数は、ナケルクロアブラバチが3種、ダイコンアブラバチが2種だったのに対し、コレマンアブラバチは1種と少ないことがわかった。 3.数式モデルによる侵入定着条件の評価 内的自然増加率(コレマンアブラバチ優位)、アブラバチ間での同一の寄主個体をめぐる競争(同時産卵だとナケルクロアブラバチに負ける)、二次寄生蜂(前記)との関係を考慮したとき、二次寄生蜂がコレマンアブラバチの個体群の崩壊を招いている可能性が高いと考えられた。
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