研究実績の概要 |
シュウ酸カルシウム針状結晶(以下針状結晶)は、パイナップル、キウイ、ヤマノイモ、ブドウ等の諸組織に含まれる微小な針状構造体であり、植物においてproteaseの耐虫性(殺虫性)を顕著に強める相乗的耐虫効果を示すことを以前明らかにした。昨年度までに細菌由来のキチナーゼと針状結晶が相乗的耐虫効果を示すこと、ヤマノイモ葉抽出液と針状結晶が相乗的耐虫効果を示すこと、ヤマノイモ葉抽出液をNative PAGE電気泳動をしたときにchitinase活性を持つバンド画分が針状結晶と相乗的耐虫効果を持つことを解明した。本年度はヤマノイモにおいて針状結晶と相乗的耐虫効果を示すキチナーゼ活性を示す因子について分子の性質を詳細に調べた。ヤマノイモ葉抽出液から調製した画分をSDS-PAGE (DTT、熱処理なし)で電気泳動し、同ゲルから50,40,33,28,24kDaの5画分を切り出しbioassay及びMALD-TOF分析を試みた。結果はMALD-TOF分析で33kDa画分にendchitinase(エンドキチナーゼ)が同定され、またbioassayでも24kDa画分以外の画分で耐虫活性が、また50~33kDaの3画分では殺虫活性(特に40kDaでは58.3%)が発現することが分かった。一方chitinase活性染色法でも40、33kDaの2画分に活性バンドが可視化され、この33、40kDa画分中のCLPタンパクが本現象に関与する重要な因子と推定された。これらの結果からヤマノイモ葉抽出液に含まれる針状結晶と相乗的耐虫性を示す因子がエンドキチナーゼを含む数種類のキチナーゼであることが判明した。ポトスをヘキサン中で粉砕して得られる針状結晶に付随して存在する昆虫に顕著な摂食拒否行動誘起因子に関する候補物質をヘキサン抽出した針画分をNMRで分析したところ、この画分に低分子有機物質の存在が確認された。
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