研究課題/領域番号 |
15H04466
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
我妻 忠雄 山形大学, 農学部, 客員教授 (70007079)
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研究分担者 |
和崎 淳 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (00374728)
小林 佑理子 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (40610952)
渡部 敏裕 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (60360939)
俵谷 圭太郎 山形大学, 農学部, 教授 (70179919)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シロイヌナズナ / 脂質再構成 / ステロール / 低リン耐性 / リン脂質 / AtALMT1遺伝子プロモーター / HMG / PAH |
研究実績の概要 |
①作出を進めてきたHMG過剰発現イネT4世代のホモ系統でAl耐性スクリーニングの確認を行った結果、HMG過剰発現系統がNOS系統よりも有意に耐性が強かった。根のAl集積は、HMG過剰発現系で低かった。根端ステロール含量は、分析方法の見直しを図って確定する。②Al誘導性根部発現プロモーター(AtALMT1遺伝子プロモーター)に融合したHMG遺伝子とPAH2遺伝子の二重組換え体シロイヌナズナで、Al耐性試験を行った。ストレス後の生育回復率では、わずかに耐性が向上した。二重組換え体や単一組換え体は、Cd耐性も示した。HMGまたはPAH2過剰発現体、pah1pah2変異体の脂質組成は、コントロール区、Alストレス区、変異体の3者間で大きく相違していたが、野生株と組換え体間に大きな差は認められなかった。今後、各種イオン耐性を再評価する。③イネ葉でのリピドーム解析を行った。-P処理で+P処理の場合に比べて、グルクロノシルジアシルグリセロール、モノ・ジ・ガラクトシルジアシルグリセロール、スルフォキノボシルグリセロールが増え、逆に、ホスファチジル(phos)コリン、phosエタノールアミン、phosグリセロール、phosイノシトールが減少し、その程度は、低リン耐性の弱いコシヒカリよりも強い赤米で、より顕著であった。強いイネは、下位葉でリン脂質を分解し、上位葉で非リン脂質を合成する脂質再構成するリン利用効率が高いと考えられた。④AtPAH1過剰発現イネとNOS導入株を用いて、リン利用を調査した。生育・リン含有量はNOSに比較して、AtPAH1過剰発現イネline6は+P条件下で、line3は-P条件下で高かった。地上部・根部でのリン分配能に、相違は認められなかった。以上から、これら両遺伝子は、それぞれの機構を通じて、各種イオンストレスへの耐性の向上に貢献し得る可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
注目している二つの遺伝子の過剰発現組換えにより、各種イオンストレスへの耐性が高まる傾向が認められつつあり、また、それらの生理的基盤として、膜脂質が重要であるという機構も解明されつつある。以上の成果は、新しいイオンストレス理論の構築に光を投ずるものと考えられるからである。
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今後の研究の推進方策 |
HMG過剰発現イネ、PAH/HMG過剰発現イネを用いた、Al・Pや各種のイオンストレスへの耐性の評価とその機構、特に、膜脂質構成との関連を最終的に解析する。シロイヌナズナ過剰発現系での、各種イオンストレスへの耐性や、その機構も最終的に確定させる。以上により、従来不明であった、膜脂質の各種イオンストレスへの関与の重要性を解明したい。
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