研究課題/領域番号 |
15H04471
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大坪 嘉行 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (40342761)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | tailing活性 |
研究実績の概要 |
qTnSeq法を実施するにあたり、断片化したゲノムDNAに効率良くアダプターDNAを付加する方法が必要であった。この目的に、マウス白血病ウィルス由来の逆転写酵素が有用であることを見出した。従来、二本鎖DNAの3'末端に突出塩基を付加する酵素としてTaqポリメラーゼやターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)が用いられてきたが前者については1塩基のAのみを付加することが可能であり、後者については30から60の塩基を付加してしまい付加する数を制御することが困難であった。本研究課題の遂行により、マウス白血病ウィルス由来の逆転写酵素が強いtailing活性を有しておりA、C、G、Tを高い効率で付加できることを見出した。またさらに、酵素活性について至適条件を探索し、4 mM程度の濃度の二価マンガンが活性を上昇させること、またC、G、T付加についてこれを特異的に増強する化合物をそれぞれ発見した。 新たに見出された当該酵素活性を利用して、PCB分解細菌であるKKS102株のトランスポゾン変異株ライブラリーの解析を行い、およそ6万箇所のトランスポゾン挿入部位を同定した。これによりKKS102株の生育必須遺伝子が明らかとなった。またPCB分解遺伝子群を乗せたICEにより、KKS102株ゲノム全体が受容菌株へと転移することを支持する結果を得た。 一方qTSS解析において、mRNAの5'端を定量的にかつなるべく高い効率で検出できるようにするため、RNAの5'に対するアダプター連結法についてモデル実験系を構築し、反応条件についての一定の知見を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
よく用いられている逆転写酵素が強いtailing活性を有していることを、本研究課題の遂行中に偶然見出した。本研究の遂行のみならず、新規知見として非常に重要であると考え、逆転写酵素の特性について様々な観点から解析を行うこととした。そのため当初計画していた研究計画について一時的に遅れが生じたが、以後その遅れを取り戻しており、概ね順調であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
トランスポゾン変異株ライブラリーを解析するための手法的な課題は既に解決されており、今後数回の実施により改善点の洗い出しと手法の改善を行いqTnSeq法として確立する。またqTSS解析については、構築したモデル実験系を用いてアダプター連結の最適条件を見出し、またこれに基づいて実際の解析を行い、KKS102株の転写開始点を網羅的に決定するとともにカタボライト調節される遺伝子を同定する。 BphPQによるカタボライト調節機構について、BphPおよびBphQアセチル化がカタボライト調節の根幹をなすとの仮説について in vitro transcriptionを用いた実験系などにより検証する。
|