研究課題
1)SufBCD複合体の結晶構造解析ならびに系統的な変異導入と生化学的な解析によって、この複合体では、SufBのβ-ヘリカルコアドメインのN末端側でSufEから硫黄原子を受け取り、同じドメインのC末端側すなわちSufB-SufDの会合面で鉄硫黄クラスターを新規に組み立てることが明らかになった。さらに、SufBのβ-ヘリカルコアドメインの内部には、N末端側からC末端側に通じるトンネルが存在すること、このトンネルを構成するアミノ酸は機能的に重要なものが多いことを明らかにした。このトンネルは進化的にも保存されており、硫黄原子の通路と考えられる。2)異種間の相補実験によって、枯草菌SUF様マシナリーの成分と大腸菌SUF/ISCマシナリーの成分との互換性を検討したところ、意外なことに、枯草菌のSufSUは、構造の相同な大腸菌IscSUではなく、大腸菌SufSEと相互に代替できることが判明した。したがって、枯草菌のSufUは、大腸菌IscUのようにFe-Sクラスターの新規形成部位として機能するのではなく、大腸菌SufEと同様に、硫黄原子のキャリアとして機能することがわかった。すなわち、SufUとIscUが機能の異なる相同タンパク質であることを明らかにした。3)枯草菌のSufS-SufU複合体の結晶構造を決定し、複合体の形成に伴って、亜鉛に対する配位子の掛け替えが起こることを明らかにした。すなわち、SufUのCys41に代わってSufSのHis342が亜鉛の配位子となり、SufSとSufUとの会合に寄与することがわかった。このとき、SufUのCys41は亜鉛から外れることでフリーな -SH状態となり、SufSの活性中心であるCys361から硫黄原子を受け取ることができるようになる。したがって、枯草菌SufUは亜鉛に依存した硫黄原子のキャリアタンパク質であることを明確にした。
1: 当初の計画以上に進展している
SufBCD複合体の構造解析と系統的な変異導入、ならびに生化学的な解析を有機的に連携させることによって、この複合体による鉄硫黄クラスター形成機構のアウトラインを明らかにすることができた。また、クラスターの生合成に関与する相同タンパク質(IscUとSufU)の役割が異なっていることを明らかにした。したがって、研究計画は当初の計画以上に進展していると評価できる。
SufBのβ-ヘリカルコアドメインの内部に見出したトンネルは、硫黄原子の通路としてだけでなく、硫黄原子のリザーバーとしての役割も想定されるため、その可能性について検討する。一方、生物界を見渡すと、SufBCD複合体を中心とするSUFマシナリーは、IscUを中心とするISCマシナリーと双璧をなしている。今後は、SufUとIscUとの機能分化を手掛かりとして進化的な側面についても解析を進め、それぞれの特性と普遍的なメカニズムの解明に努める。
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