研究課題/領域番号 |
15H04474
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (70243087)
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研究分担者 |
川本 純 京都大学, 化学研究所, 助教 (90511238)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生体膜 / リン脂質 / 高度不飽和脂肪酸 / エイコサペンタエン酸 / マイクロドメイン / 細菌 |
研究実績の概要 |
(1) エイコサペンタエン酸の生体内での動態を解析するためのツールとして、EPA のω末端にエチニル基(炭素-炭素三重結合をもつ官能基)を導入した化合物 (cEPA) を合成した。全 12 段階の反応で cEPA を合成する方法を確立し、これにより収率 5.2% で cEPA を得ることに成功した。対照実験で用いるための cPAL(パルミトレイン酸のω末端にエチニル基を導入した化合物)の合成法も確立した。次に、cEPA を Shewanella livingstonensis Ac10 の EPA 欠損株に添加し、cEPA が EPA の機能を代替できるか調べた。本菌の EPA 欠損株は、低温での生育速度が野生株に比べて著しく遅く、また、異常に伸長した細胞を形成するが、EPA を培地に添加することで、これらの生育阻害が抑制される。cEPA を培地に添加したところ、天然型 EPA を添加したときと同様、生育遅延と異常な細胞伸長が抑制された。また、cEPA がリン脂質のアシル鎖として取り込まれることも明らかとなった。以上のことから、本菌において cEPA は天然型 EPA と同様に機能すると考えられた。 (2) S. livingstonensis Ac10 の野生株および EPA 欠損株を、cEPA あるいは cPAL を添加した培地で、4 °Cで培養した。培養後の菌体を化学固定した後に、アジド基をもつ蛍光色素 Alexa FluorTM 488 azide を添加し、クリックケミストリーによりω末端エチニル基を蛍光標識することで、cEPA と cPAL を可視化した。cPAL を添加した場合、細胞全体に拡散した蛍光シグナルが検出される細胞が多かったのに対して、cEPA を添加した場合では、細胞内に不均一に蛍光シグナルが分布した細胞が多く観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
cEPA の効率的な合成法を確立するとともに、その細胞内での可視化に成功するなど、大きな進展があった。一方、EPA のリン脂質への導入を触媒する酵素 PlsC1 の細胞内局在化機構の解明には至っていないことから、「おおむね順調に進展している」と評価することが妥当と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
PlsC1 の特性解析、特に細胞内局在性と局在化機構の解析を重点的に進める。また、EPA がリン脂質のアシル鎖としてのみならず、タンパク質の修飾剤として機能することが示唆されているので、cEPA を細胞に添加し、cEPA 修飾タンパク質を同定する実験も進める。
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