研究課題
ヒト腸内フローラの中核を占めるクロストリジア綱細菌群には、善玉菌から悪玉菌そして病原菌も含まれ多種多様である。これまでの申請者らの研究および細菌ゲノム配列データから、このクロストリジアの多くが、種特異的な環状ペプチドシグナル(AIP)を用いて同種菌間でコミュニケーションを行い、遺伝子の発現を特異的にコントロールし(クオラムセンシング:QS)、また、時には他種細菌のQSを干渉(クオラムクエンチング:QQ)していることが示唆されている。また、我々は近年、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)が自らQSを消光させる自己QQ機構を有することを見出している。本年度は、そのQQ機構について詳細な分子機構を調べた。その結果、ウェルシュ菌においては、細胞増殖とともに培地中に蓄積される酢酸や酪酸による細胞外pHの低下がQQの引き金となっていることが明らかとなった。そしてさらにその詳細な分子機構を解析したところ、細胞外pHの低下にともない、QS機構が停止し、本来QSにより発現が誘導される毒素遺伝子(pfoA)の発現が停止し、さらにそれまでに蓄積されていたpfoAのmRNAの分解が起こることが明らかとなった。また、酪酸菌(Clostridium butyricum)とウェルシュ菌および酪酸菌とディフィシル菌(Clostridium difficile)間のQSのクロストークを調べた。その結果、酪酸菌のAIPがウェルシュ菌やディフィシル菌のQSを阻害することを見出した。以上の結果から、クロストリジア綱細菌群は腸管において、自身の遺伝子発現を制御するQSを活用し、フェノタイプを積極的に細胞密度依存的に制御する機構を持ち合わせているのに加えて、異種細菌間のコミュニケーションもAIPを用いて行っているという可能性が示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Bioscience and Bioengineering
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10.1016/j.jbiosc.2017.12.019