研究課題/領域番号 |
15H04481
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
片山 高嶺 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (70346104)
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研究分担者 |
日高 將文 東北大学, 農学研究科, 助教 (00584848)
栗原 新 石川県立大学, 生物資源環境学部, 寄附講座准教授 (20630966)
廣瀬 潤子 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (40381917)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ビフィズス菌 / 母乳オリゴ糖 / 共生 / 共進化 / 酵素解析 / 酵素合成 |
研究実績の概要 |
本研究は、(1)「母乳栄養児の腸管では何故ビフィズス菌優勢な腸内細菌叢(ビフィズスフローラ)が形成されるのか」という100年来の謎を母乳オリゴ糖とその分解酵素から解明すること、および、(2)酵素機能を改変して母乳オリゴ糖の精密酵素合成法を開発することを目的として行っている。平成28年度の実績内容は以下の通りである。 ・テーマ(1)について Bifidobacterium longum由来のラクト-N-ビオシダーゼ(LnbX)のin vivoでの生理機能を解明するために、乳児糞便由来DNAの解析を行った。また、LnbXのX線結晶構造解析を行った。その結果、ビフィズス菌およびlnbX遺伝子の占有率が完全母乳栄養児の糞便において混合乳栄養児の糞便よりも有為に高いこと、また両者の間に高い相関が見られることが明らかとなった。この相関は混合乳栄養児では全く見られなかった。このことは、母乳栄養児におけるビフィズスフローラの形成にlnbXが関与していることを示唆している。構造解析の結果、本酵素は通常多糖の分解酵素において見られるβ-ヘリックス構造をとっていることが明らかとなった。また、反応産物との複合体構造を解析することで活性中心における各アミノ酸残基の役割を明らかとした。 ・テーマ(2)について Bifidobacterium bifidum由来の1,2-α-フコシダーゼの改変酵素を50種以上作製し、β-フッ化フコースおよびラクトースから2'-フコシルラクトースを合成可能な変異体をスクリーニングした。その結果、収率80%以上で合成可能な変異体の取得に成功した。本酵素はN-グリカンやO-グリカンの非還元末端側のみならず、植物由来のキシログルカンに存在するガラクトース残基にも作用してH抗原を導入することが出来た。すなわち、Fucα(1,2)Gal構造の高効率・高精度合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乳児由来の糞便解析を行うことで、ビフィズス菌の母乳オリゴ糖分解酵素の生理機能を解析することが可能となった。また、母乳オリゴ糖の主成分である2'-フコシルラクトースの合成法を開発することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
ビフィズス菌の母乳オリゴ糖分解酵素遺伝子の破壊株を作製し、マウスに母乳オリゴ糖と共に投与することで母乳オリゴ糖のビフィズス因子としての機能をin vivoで証明することが必要である。
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