研究課題
糖質は,特に結合様式の多様性のために豊富な分子種をもつ.有用化合物が多数存在すると予想されるが,探索に先だち,多様な糖質の大量合成系―すなわち天然に豊富な糖質からの転換系―の確立が必須だ.本研究では,合成酵素と転移酵素を利用した高度な糖質合成系確立を目指して実施した.(a)合成酵素:利用上の主要問題となる基質(UDP-Glcなどの糖ヌクレオチド)供給には,植物由来のショ糖合成酵素(組換え酵素)を用い,ショ糖の「加UDP分解反応」によった.糖ヌクレオチドを糖供与体として二糖合成を行う糖合成酵素をワンポットで反応させて,低UDP濃度存在下の二糖合成に成功した.二糖は基質ベースで96%の高効率で合成された.マルトースを出発材料としたホスホリラーゼによる「加リン酸分解反応」との比較した.ショ糖合成酵素の構造機能解析結果に基づく改変により,ADPに対し4倍以上の速度向上(kcat/Km値での評価)を伴うADP特異的変異体など,他の糖ヌクレオチドの供給系も作出した.(b)転移酵素:利用上の問題となる酵素種類の多様化を行った.既存の酵素Dは,天然に豊富なオリゴ糖に作用し,糖転移反応により結合様式の異なる多糖を生成する.本酵素の触媒残基および基質結合に係るアミノ酸残基を同定し機能解析を速度論的に評価した.酵素Dのアミノ酸配列は転移酵素としては従来見られなかったものである.類縁の推定タンパク質数種の組換えタンパク質を作出して,機能解析を行った.そのうちの一つは,酵素Dの触媒部位近傍のアミノ酸残基の保存性は高い一方,転移活性は高いが多糖ポリマー形成能が低く,すなわちに天然に豊富なオリゴ糖を素材として,これとは結合様式の異なるオリゴ糖の生産に適した転移酵素であった.更に本酵素は,新たなオリゴ糖から環状オリゴ糖を生成した.
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 81 ページ: 1512~1519
10.1080/09168451.2017.1329620
Applied Microbiology and Biotechnology
巻: 101 ページ: 6399~6408
10.1007/s00253-017-8402-6